産経関西/産創館広場

現場主義が育てる戦略的IT企業

2014.03.10

特定の業界に特化することで、仕事の受注・人材育成にシナジー効果をもたらし、組織を強化しているソフトウエア開発会社がある。2010年に設立された「大化物流開発合同会社」だ。

ソフトウエア開発の一般的なビジネスモデルから考えると、特定の業界に絞ることは受注の間口を狭めることにもつながり、リスクが高いように思える。しかし、顧客や社員を満足させるためには、特定のノウハウを蓄積することが必要であると代表取締役の入江徹氏は考えた。

ノウハウを蓄積することでシステムエンジニアが年齢にかかわらず長く活躍でき、取引先へ有効な提案ができる。取引先からの相談内容によっては、システム開発につながらなくても、倉庫のレイアウト変更などの業務改善の提案で終わることもあるという。「お客さまと現場の課題解決が第一」が同社の姿勢だ。

こうした現場主義の視点を徹底することで「なぜ今までなかったのか」とすら思えるサービスの発想が生まれる。その一例が、この春リリース予定の「3PL(物流倉庫)が探せるポータルサイト」だ。

中小の物流事業者が自社の存在を世に広く知ってもらうことは難しい。しかし特定の業界に強みがあったり、柔軟に対応できたりするなど、中小ならではの特長を持つ企業も多い。こうした物流業者を探せるサイトは、ネットショップを運営する事業者にとってメリットが高いと考えた。現場のニーズに向き合っているからこそ、業界の課題解決につながるアイデアが生まれるのだろう。

同社は今後、エネルギー分野のシステム開発にも乗り出す。現在、環境負荷削減やエネルギー利用の効率化を目的とした実証を行う「咲洲・アジアスマートコミュニティ協議会」に参加している。

一見、物流とエネルギー分野に接点はないようにも思えるが、両分野ともに、拠点から遠くへ離れるほどコストがかかるという構造が共通している。物流で培ったノウハウをエネルギー分野にも応用できる。

ソフトウエア開発会社が首都圏に集中するいま、大阪を本拠地としながら自社の強みを生かして発展を続ける同社の、今後の更なる展開に期待したい。

(大阪産業創造館 プランナー 佐藤麻耶)

sankeikansai140312

▲「社名に『物流』を入れて明確に差別化を図った」と語る入江徹氏

大化物流開発合同会社

http://www.taika-solution.co.jp/