産経関西/産創館広場

硬い金属 自在に操る柔軟発想

2015.05.11

高温になる自動車やバイクのエンジンやマフラーの排気系周辺部において、制振や緩衝のためのクッション材やフィルター材の製造を行う株式会社ベスト(大阪市鶴見区)。

ベースになるのは、「金属を編む」技術だ。

同社は直径0.04~0.6ミリまでの金属細線を、オリジナルの金属メッシュ製品専用の自動編み機で編み、それを圧縮成形する。素材はステンレス、鉄、真鍮(しんちゅう)、アルミ、銅、チタン、マグネシウムなど多岐にわたり、厚みや圧縮具合によって、硬さや形状に自由度が出るのが大きな特長だ。

自動車・自動二輪車用排気管のガスケット製造からスタートした同社。5年後には渦巻き型ガスケットの全自動生産機を自社開発し、その後現在の主力事業となるワイヤーメッシュ製品開発に着手した。当時の機械はかなり大型で、製品のばらつきも多かったという。そこで自分たちが使いやすいよう、機械の小型化やNC化(自動化)に取り組み、生産効率の3割向上や量産態勢を確立した。

また、材料の歩留まりや品質向上にも取り組んでいる。ワイヤーメッシュを切断する際に必ず出る切端の完全除去を目指し、端を中に織り込む加工工程の開発や、通常では編むことが困難なチタンやマグネシウムの金属細線の編成方法などで特許も複数取得。これらの方法で生産されたワイヤーメッシュは、異物の混入が許されない精密機械など、より高精度な領域での採用を狙っているという。

「既存事業に固執することなく、やりがいを持って社員が取り組みたいと思うことには積極的に挑戦していきたい」と語る野田康洋社長。最近ではデザイン専門学校や大学の教材としてワイヤーメッシュを提供し、学生のアイデアを取り込んだアクセサリーの商品化を目指している。

電気自動車の普及など今後の自動車産業界の変化に備え、独自技術の高度化や新たな製造方法の考案、設備の内製化に取り組むなど、着々と準備を進めている。軸足は自動車業界にしっかり置きつつ、ワイヤーメッシュを武器に、柔軟に異業種との可能性も探っていく。

(大阪産業創造館シニアプランナー 内田貴美代)

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▲自動車に使われているベスト社のフィルター部品。異業種の発想で形を変えアクセサリー(左上と右上)にもなる

 

株式会社ベスト