経営者と社員 心結ぶ「給与明細」を
会社経営で経営者が頭を悩ませる課題の一つに、事業を成長させる原動力となる「組織力強化」があげられる。しかし多くの中小企業の経営者は「社員を大切にしたい」という思いを持ちながらも、具体的な施策を実践できずにいるのではないだろうか。
本田麻里社長が1年前に立ち上げた株式会社「OfficeM(オフィスエム)」(大阪市中央区)は、経営者が敬遠しがちな毎月の「給与処理」を通じて、企業の組織力を高めるサポートを行う。一般的に給与処理というと、毎月の細かな計算を正確に効率良く行うというイメージだが、同社のサービスは単に処理として代行するだけではなく、給与処理を切り口として経営者の悩みを解決するコンサルティングにつなげている。
本田社長が企業の経営力向上に貢献したいと思ったきっかけは、前職でシステムエンジニアとして給与処理システムの開発と運用に携わった経験だ。20年近く給与処理に関わる中で、社員に対する思いを持ちながら、なかなかうまく伝えきれないという悩みを抱える経営者が多いことを肌で感じた。「こんなに給与処理は大変なのに、経営者の受け渡し方も社員の受け取り方も事務的になっていて何かもったいない」という思いから、給与計算代行をベースにした組織活性化コンサルティングの会社を興した。
一番の特長は、経営者の思いを手紙にして給与明細に添えて社員に渡す「グリーティングカード」を使ったサービス。社員のみならず、社員の家族の誕生日などの記念日に合わせてメッセージを考え、カードを作成するというものだ。経営者と相談しながら、メッセージを一緒に考え、一人一人への思いを言葉にしていく。実際に、このサービスを導入した企業では、感激した社員の家族から、「社長に必ずありがとうと伝えてね」という会話の循環が生まれるなど、経営者の思いを伝え、さらには家族を通じたコミュニケーションへとつながる「新しい給与明細」として徐々に認められてきている。
組織力強化に悩みを持つ中小企業経営者のみならず、働く社員や家族の双方の視点に立ってきめ細かいサービスを提供することで両者の心の架け橋になることをめざしている。
(大阪産業創造館 プランナー 門田知久)
▲オリジナルの給与明細書を手にする本田社長
株式会社OfficeM