吐息で保温保湿する快眠グッズ
創業約110年の二口印刷(大阪市西区)が初めての自社商品を今年1月に発売した。「ある寒い日、紙袋をかぶって寝たらよく寝られた」という二口晴一社長の偶然の経験から生まれた、睡眠の頭部カバー「マイドーム」だ。頭に被ることでドーム状となり、吐く息によって保温保湿ができる。高級不織布でできているため、適度な通気性があり、コンパクトに折りたたんで出張や旅行先に携行することも、水洗いすることも可能だ。
開発・研究に要した期間は2年。知り合いやマーケティング会社を通じてモニター調査を行うと共に、寝具メーカーにも赴きアドバイスを求めた。睡眠時に使用するため、ちょっとした支障が命に関わる大事故につながりかねない。被ったときに違和感がなく、安全性のために容易に着脱できる形状を研究するため、協力会社を巻き込んで何十個と作った試作品を社長自らがテストし続けた。開発に熱中するあまり、ゴミ箱をかぶって寝ているのを奥さんに見つかり、驚かせたこともあったという。ある小売店のバイヤーからは「こういった商品は、中国や韓国で安く量産し、短サイクルでさばききるものだ」とも言われた。しかし、「中小企業だからこそ、安心して使ってもらえる商品を作りたい」との思いが強く、印刷から型抜き・縫製まで、すべてMade in OSAKAを実現した。
商品の発売に当たり、大阪産業創造館のプレスリリース配信サービス「サンソウカンde記者会見」を活用。情報番組や経済紙などで取り上げられ、問い合わせも徐々に増加している。現在、自社サイトで直販を行うほか、風邪の予防や安眠というニーズが高いことから、受験予備校やホテル、カー用品専門店などに提案を続けている。商品のプロモーションや消費者への直接販売については、これまで本業で培ってきた販売促進のノウハウが生きている。とはいえ、「フェイスブックやwebサイトで消費者の反応を確かめ、紙媒体へと落とし込んでいく、そういった流れは実際にメーカーの立場になったからこそわかることがあった」と振り返る。「世界中の誰もが毎日睡眠する。いずれは日本製を武器に海外へも進出したい」と二口社長は意気込む。
(大阪産業創造館 プランナー 徳中絵美)
▲保温保湿効果だけでなく、視界が遮られることによる安眠効果も期待できる
株式会社 二口印刷