人との出会いから新たな発想を
「もっと動いていたらよかった」と会社員時代を振り返るのは、映像関連機器メーカーのカナリア株式会社とイベント企画のクロネコキューブ株式会社(ともに神戸市)の代表取締役を務める岡田充弘氏だ。「新しい挑戦は100回やって99回失敗するのが当たり前。失敗してもいい、他の人の5倍頑張ればいい」と話す姿はどこまでも前向きで“気持ちのいい人”という言葉がよく似合う。
岡田氏は世界最大級の会計系コンサルティング会社、プライスウォーターハウスクーパースに勤め、その経験を生かしてカナリアの前身である製造業の甲南エレクトロニクスに経営幹部として参画。廃業寸前に追い込まれていた事業を再建し、高収益企業へと導いた後、カナリアへの商号変更と同時に2008年、代表取締役に就任した。
カナリアは市販の民生・業務用ビデオカメラをリモートで制御し、無人で撮影できる機器などが主力製品だ。対応するカメラを自由に選べ、延長ケーブルやオプションを柔軟に組み合わせることで、無限に用途を拡張できる。東日本大震災では、同社の製品を採用したロボットが人が立ち入ることができない地域での調査に大活躍した。
そんな岡田氏が仕事で大切にしていることは“遊び心”と“人とのつながり”だ。13年に新たに立ち上げたクロネコキューブで手掛ける「現実版脱出ゲーム」は、参加者自身が物語の主人公となり、会場内に隠された数々の謎を解明しながらゴールをめざすイベント。非日常の感覚を体験でき、人との連帯感が生まれると好評だ。
柔軟な発想とチームワークで課題を解決していく脱出ゲームは遊びの枠を超え、企業の新入社員研修や、婚活イベントなどでも活用され、用途に広がりを見せている。
人が出会うことにより新たな発想が生まれる。いつもの場所で同じ人に会い、同じ仕事をしていると、新しいアイデアは生まれない。「今日もより多くの人と出会いたい」と話す岡田氏。人を必要としない無人撮影と、人が出会うことで何かが生まれる脱出ゲーム。真逆な2つの会社を運営しながら、その2つをつなぐ新しい計画を模索している。
(大阪産業創造館 プランナー 井本達也)
▲「新しい事業に積極的に取り組みたい」と語る岡田氏