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自然の摂理を再現 途上国の課題に挑む無動力浄化システム

2026.06.04

多くの先進国では、各家庭の下水を配管で集めて一括処理する仕組みが主流だが、日本では各戸に浄化槽を設置し、微生物の力を借りて生活排水を処理する分散型が採用されている。「低コストで、速く、どこにでも設置できるこの日本式浄化槽こそ、下水道の普及が進んでいない途上国の衛生対策として適している」と、関西化工株式会社の創業者である余吾氏は、早くから浄化槽のグローバル展開の可能性に着目していた。そして、電力不足などの課題を抱える途上国の問題解決につなげるため「無動力浄化システム(DMR:Domestic Multi Recycler)」を独自に開発した。

同社は1983年の創業以来、浄化槽や排水処理設備に用いられる部材や装置の開発・製造を手がけてきた。特に、微生物の働きを活用した水質改善技術に強みを持っている。「早くから環境意識が高まる時代が来ると予想し、水処理工程で発生する大量の汚泥処理や、化学肥料や農薬を一切使わない栽培など、業界に先駆けてさまざまな取り組みにチャレンジしてきました」と余吾氏は語る。

DMRの処理水を液肥として活用し、栽培したニンジン。

DMRの最大の特徴は、電力を一切使用せずに生活排水を処理できる点だ。日本で普及している浄化槽は、好気性、すなわち酸素を好む微生物を使って有機物を分解するため、浄化槽にブロワーで空気を送り込まなければならず、電力が不可欠となる。そこでDMRでは、嫌気性微生物の力を活用する仕組みを採用。より多くの嫌気性微生物が住みつきやすいように工夫を重ね、特性の異なるろ過材を2種類組み合わせることで、処理速度の向上と、システムの小型化を実現した。

また、好気性微生物による処理では、条件によって窒素やリンの除去も進むことがあるが、嫌気性微生物の分解では農作物の生育に必要な窒素やリンが残る。そのため、この処理水を液肥として、農作物の生育促進につなげることができる。愛媛大学で、DMRの液肥、従来の施肥、無施肥の3つの条件で栽培試験を行った結果、DMRの液肥のみで栽培した場合に、最も生育の良い結果が得られたという。「DMRを設置することによって、電力がいきわたっていない途上国の農村部などの衛生問題を解決するとともに、液肥を活用して付加価値の高い作物を栽培することによって農村の生活と経済に豊かさをもたらしたい」と思いを語る。

インドの農村部で行われたDMRの実証実験の様子。

2017年からはインドの農村部でDMRの実証試験を行い、直近では財閥系企業と連携し、現地でDMRを生産する体制も構築した。今後の普及に向けて、現地の大学と効果を実証する研究を進める一方、浄化槽の普及に欠かせない法整備や設置のための助成金制度の創設について国への働きかけも行っている。「いずれは液肥でとれた作物をホテルやレストランなどにも販売し、さらにジュースなどに加工する6次産業化も提案していきたい」と語る。また、日常的に停電リスクを抱えるナイジェリアなど、アフリカ諸国への導入も検討している。

「野生生物の糞は地中の微生物で分解され、有機分を含んだ水が海に流れ、その栄養が豊かな漁場を生み出します。その自然のサイクルをシステムの中に収めたのがDMRなんです」。無駄なエネルギーを必要とせず、自然の知恵を再現したDMRが世界に普及する日が待ち遠しい。

取締役会長 余吾 俊氏

(取材・文/山口裕史)
※掲載写真は、編集部にて撮影したもの以外に、取材先企業からご提供いただいた写真も含まれています。

関西化工株式会社

取締役会長

余吾 俊氏

https://kansaikako.co.jp

事業内容/水処理関連製品の開発・ 製造・販売