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万博へ、宇宙へと広がるへら絞り加工の未来

2026.07.01

回転させた金属の円板に、へらと呼ばれる工具を押し当て、金型に沿わせて伸ばし、形をつくるへら絞り加工。戦後にプレス加工が普及するまでは、鍋やたらい、皿などの製造に広く用いられていた加工法だ。継ぎ目がなく高い強度が確保できることに加え、へらが金属に当たる時にできる連続的な線が生み出す工芸美が特徴だ。

株式会社青戸金属では、へら絞り加工だけでなく、穴を開けるための三次元レーザー加工や曲げ加工、溶接などの技術を組み合わせることで、完成品まで一貫して製造できる体制を整えてきた。この総合力を生かし、ランプシェードや水栓用品、キャンプグッズ、空調ダクト部品などを製造している。大阪・関西万博の大屋根リングに約2,000個配置された照明のシェードも同社製だ。「プレス加工が雄雌一対の金型を必要とするのに対し、へら絞りは雄型だけで作れることも強みです。工期が限られる中、短納期で対応できる点も評価されました」と青戸氏は誇らしげに語る。

取締役 青戸 友和氏

現在、社内でへら絞り加工ができる職人は、青戸氏を含めて3名のみ。技能をいかに次世代に継承していくかが大きなテーマとなっている。そこで取り組んでいるのが、技術の標準化と機械化だ。標準化では、へらの力の加え方、送り速度、軸の回転数などの条件について職人一人ひとりにヒアリングを行い、これまで感覚に頼っていた技術の言語化を進めてきた。また、より大きな力が必要な板厚1.2mm以上の円板については、油圧式のへら絞り加工機に加圧力や送り速度のデータを入力し、自動化を進めている。「もちろん繊細で難しい、手絞りでしかできない加工も大切に守っていきたいと思っています」と青戸氏は語る。

近年は工場の周囲に住宅やマンションが増えた。地域の人に理解と関心を深めてもらおうと取り組んでいるのが、工場やものづくりの様子を一般公開するオープンファクトリーへの参加だ。「最初は嫌がっていたベテランの職人も、来場者から拍手をもらい照れくさそうにしています」と青戸氏は笑う。

なにより、こうした取り組みが外部にも伝わり、新しい依頼にもつながった。その一つが航空宇宙エンジン部品の加工だ。鉄やステンレス、アルミなど従来使っていた素材とは異なり、チタンやインコネルといった超硬合金の加工には新たなアプローチで挑んだ。そこで蓄えた新たな知見と実績は同社にとって大きな自信になっている。「今後は展示会でも航空宇宙分野の実績をアピールし、新たな顧客を開拓していきたい」と青戸氏。へら絞り加工にしかできない領域は、まだまだ広がりそうだ。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

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株式会社青戸金属

取締役

青戸 友和氏

https://www.aoto-kinzoku.co.jp

事業内容/へら絞りを柱とする各種金属加工