「部品調達を途絶えさせない」ロウ付け技術で製造業を支える

金属同士をつなぐロウ付け。
磨き上げた技術とネットワークを武器に、調達難に悩むメーカーの要望に応え続ける同社の強みとは。
溶かした金属を接着剤のように使う接合方法は、古代エジプトの装飾品にも使われたといわれる技術で、長い歴史を持つ。その工法のひとつ「ロウ付け」は、母材よりも融点の低い「ロウ」と呼ばれる合金を熱して接合部分に流し込み、母材を溶かすことなく接合させる。「はんだ」は融点が450℃未満であるのに対し、それより高いものを「ロウ」と呼ぶ。

「ロウ付けを知らない人や、溶接と同じだと思っている人も少なくない」と語るのは大一電機株式会社の代表である紺谷氏。同社は銅加工を手がける会社として紺谷氏の祖父が1958年に創業し、大手電機メーカーの指定工場として事業を拡大してきた。手がけるのは主に接触子などの電気部品で、製品の多くは電力会社や鉄鋼メーカー、鉄道会社などへ納められる。この事業を通して磨き上げてきたのがロウ付けの技術だ。

代表取締役 紺谷 彰良氏
一言で「ロウ付け」といっても、母材の種類や加工品の用途などに応じてさまざまな種類がある。ロウに使われる金属は銀やリン銅のほか、真ちゅうなどがあり、同種の金属でもサプライヤーによって規格が異なる場合もある。「ロウ材によって溶けたときの濡れ性や、固まったときの表面の状態が異なります。だからロウ材の選定は重要で、私たちが得意とする部分でもあります」と紺谷氏。

ロウ付け部分の拡大。母材を溶かさず、ロウを流し込むことで金属同士を接合する。
ただ、この強みは実際にロウ付けを行う職人の技術が伴ってこそ価値を生む。同社が得意とするバーナーロウ付けは、ガスバーナーで接合部分を熱しながらロウを溶かして流す手法で、火の温度や当て方などの微妙な違いが品質を左右する。「バーナーの当て方によっては母材が酸化して黒くなったり、接合が弱くなったりすることがあります。一発で成功させるかどうか、職人の腕の見せ所ですね」とゼネラルマネージャーの清水氏は語る。

ゼネラルマネージャー清水 信一郎氏
品質を追求する姿勢が評価され、着実に信頼を築いてきた大一電機。「私たちが納める電気部品はお客さまの中で常に一定の需要があるため、以前は積極的な営業活動をしていませんでした」と振り返る。しかし、数年前に金融機関の勧めで展示会に出展したことで、意外なニーズの存在を知る。「初めて展示会に出たとき、産業用の部品だけでなく、ドアノブのような身近な部材にもロウ付けの需要があることを知りました。それを機に、もっと幅広い分野に挑戦してみようという機運が生まれ、人員体制も強化してきました」と紺谷氏。来年には本社工場の拡張移転も予定しているという。

火の当て方や温度を見極めながら、一つひとつの製品をロウ付けしていく。
同社は、時代とともに部品の調達が難しくなり、事業継続に不安を抱える企業を支えたいと考えている。そのため、廃番となった部品の加工にも長く力を注いできた。「以前、地方の電鉄会社から『どうしても調達できない車両部品がある』とご相談いただき、弊社で加工して納品しました。その結果、今も電車が無事に走っています。同様に部品の廃番や仕入先の廃業などで困っているメーカーさんは数多くあるので、その需要に応えて日本の製造業を守っていきたい」と抱負を語る。この思いを形にすべく、同社では200社ほどの加工業者とネットワークを築き、顧客の依頼にワンストップで応えられる体制を整えている。「ご依頼の内容によっては、弊社の設備だけでは対応できない場合もあります。そのような場合でも可能な限りご要望を叶える体制づくりをめざしています」。
確かな技術力を武器に、バブル崩壊やコロナ禍など幾多の災禍を乗り越えてきた大一電機。その歴史を見守ってきた清水氏は、生き残ってきた秘訣をシンプルな言葉で語ってくれた。「丁寧なものづくりで、お客さまから信頼していただけたこと。それに尽きますね」。

(取材・文/福希楽喜 写真/福永浩二)









