「ミャクミャク」グッズ1,000アイテムを生み出したクリエイターの商品企画

「商品企画は大喜利である。お題が出されたらその場で返す」。株式会社ヘソプロダクションの代表である稲本氏にとって、企画力とは瞬発力と同義だ。「一週間かけて考える大喜利なんておもしろくないでしょ。その場で答えるからいいんです」。これまで数々の雑貨や文具、食品メーカーとのコラボ商品を生み出してきた同社が、過去最大の注目を集めたのが2025年の大阪・関西万博だった。企画・販売した『ミャクミャク』のオフィシャルグッズは約1,000種類。その多くがまるで飛ぶように売れて行き、同社の年商は例年の約4倍にまで伸びた。

流行語になった言葉の焼き印を押した、ヒット商品「忖度まんじゅう」。
約9割のグッズは稲本氏がアイデアを出し、協会やMLO(マスターライセンスオフィス)の監修などを経ながら商品化を進めてきた。アイデアから商品化を決めるまでにかける時間はわずか数分。万博という大喜利の場で、『ミャクミャク』というお題に対し、1,000にも及ぶ「答え」を返し続けたことになる。その膨大な商品展開に勝算はあったのだろうか。「商品にする側から見ると、ミャクミャクは面倒なキャラクターですね。左右非対称の形や目の位置、色や全体の雰囲気など、立体で表現するのが難しい。でも、いい意味で引っかかるキャラクターだと思いました」。稲本氏によれば、すんなり受け入れられるものは大きなヒットにはつながりにくい。人が思わず足を止めて手に取る商品には「いい違和感」があるという。ミャクミャクにはそれがあった。開催前、稲本氏はまだ誰もいない会場を見ながら、来場者が次々とグッズを手に取る様子をイメージしていた。

ミャクミャク 砂時計付きカップ麺ストッパー
万博という公的なイベントだけに、商品化には厳しいレギュレーションが設けられている。アイデアを実際の商品にするには、協会やMLOの監修を経る必要があり、申請手続きや品質保証、検査などクリアすべき条件は多い。開催前は「商品化が間に合うのだろうか」と気をもみ、開催後は想像を超える売れ行きに「追加生産はどこまで増やすべきか」と、連日判断と対応に追われる日々だった。「これまでいろいろなヒット商品を見てきましたが、ああいう熱狂的な売れ方は僕の人生でも初めてでした」と振り返る。

ミャクミャクハンディファン
もともと稲本氏は、「商品企画には一人のカリスマがいればいい」という考えを持つ。10人で企画を考えれば、必ず反対意見が出る。その調整に時間を費やすうちに、アイデアの鮮度は失われ、おもしろさも薄れてしまう。稲本氏が会社員を辞め、ヘソプロダクションを立ち上げた背景には、「責任は全て自分が取る。だからやってみよう」。そう言える立場でいたかったからだ。「やりたいことをやるとはそういうこと。売れるかどうかわからない恐怖心を、『楽しい』『おもしろい』という感情に変換する」。稲本氏はクリエイターの条件をそう明言した。

代表取締役/経営表現者 稲本 ミノル氏
(取材・文/荒木さと子)
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