金属と熱の関係を熟知した摩擦圧接のパイオニア

金属は熱によって性質を変える。
その変化を読み解き、最適な性能を引き出す。
熱処理の知見が支える高度な加工技術に迫る。
「熱の加え方によって金属がどのような状態になるか、すべて理解した上で加工できる」と自社の強みを語るのは、東洋摩擦圧接工業株式会社の代表である小田垣氏。「金属は『強ければ良い』というものではなく、最終製品の使われ方に応じて硬さと柔らかさ、粘りなどを細かく調整する必要があります。そのためには熱処理に精通している必要があります」と金属加工の奥深さを語る。

代表取締役 小田垣 達夫氏
そんな同社のコア技術は「摩擦圧接」と「高周波焼入」。依頼に応じて切削や歯切りなどの機械加工も組み合わせ、農機や工具、自動車、産業機械などの部品を供給している。社名にも掲げる「摩擦圧接」とは、金属を高速で回転させながら押し当てることで熱を発生させ、2つの部材を接合するもの。一般的な溶接に比べて低コストかつ短時間で加工でき、金属を溶かさず接合するため強度が強く、異種金属の接合にも適している。



摩擦圧接の工程。高速回転による摩擦熱を利用し、強固に接合する。
摩擦圧接は旧ソ連の造船技術として開発され、1960年代に日本に取り入れた豊田自動織機社が装置の量産を開始。それを加工業者として初めて導入したのが東洋摩擦圧接工業の前身となる会社で、その導入を担当したのが小田垣氏の父だった。小田垣氏の父は担当部署を独立させる形で1968年に東洋摩擦圧接工業を創業し、摩擦圧接を活用した部品加工のパイオニアとして事業を拡大してきた。リニアモーターカーの山梨実験線が整備された際には、アルミと銅を接合した部品を同社が供給したという。

この技術の強みをさらに高めているのが、もうひとつのコア技術である「高周波焼入」だ。前身の会社が高周波焼入を主力にしていたこともあり、その専門性には定評がある。「高周波焼入は、部品の表面だけを硬くし、内部は金属本来の粘り強さを残すことができる技術です。製品の用途に応じて『表面の硬さ』と『内部の粘り』を調整することで、耐摩耗性や疲労強度を高めることができます。当社では摩擦圧接と高周波焼入を組み合わせ、部材の加工性や製品の耐久性を高めています」。この専門性に対する顧客からの信頼は厚く、最適な加工法についてアドバイスを求める大手メーカーも少なくない。また、あるメーカーが部品製造の大部分を海外へ移管しようとした際にも、同社が手がけていた部品だけは残さざるを得なかったという。「同じ図面に従って加工した部品でも、加工方法によっては使用を重ねる中で折れてしまうことがあります。私たちは製品の用途に応じて表面の硬さや内部の粘りまで考慮して熱処理ができるので、そうしたトラブルを回避できるのです」。

金属の性質を熟知した職人が、一つひとつの部品に最適な加工を施す。
現在、経営を率いる小田垣氏は、鋼板を扱う企業の営業を経て約30年前に入社。2019年に経営トップを受け継ぎ、「前職で金属材料に詳しくなった」という自身の強みも生かしつつ、市場の変化を見据える。「摩擦圧接の分野では先行企業として優位性を築いてきましたが、同じことを続けていれば、部品が新しくなるたびに過当競争に巻き込まれてしまいます。それを避けるためにも、自社の技術をより高付加価値な製品へ応用していく必要があります」。近年は、磁性材と非磁性材を接合させたモーターシャフトの加工など、新たな分野の開拓にも力を入れている。
「60年以上の歴史があるにも関わらず、摩擦圧接の認知度は低い」と語る小田垣氏。「強度以外にも溶材が不要な点や省エネかつ短時間で加工できる点などメリットは多く、それらが正しく認知されれば、まだまだ市場が広がる可能性があります。そのための事業展開や情報発信に、今後さらに力を入れていきたいですね」。

(取材・文/福希楽喜 写真/福永浩二)









