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1,000℃に耐えるバーコードラベルで世界に飛躍

2019.01.29

製品の生産履歴や在庫を確認するために今やバーコード管理は欠かせない。だが、製品の持つ特性や製造環境の制約からバーコードを貼り付けることが難しい分野が残されている。高熱の環境で造られる製品群もその一つだった。

YSテックは、1,000℃の高熱下で生産される鉄鋼製品にも貼り付けられる耐熱バーコードラベルで他の追随を許さない。経済産業省のグローバルニッチトップ企業100選にも選ばれている。

開発の端緒は25年前にさかのぼる。テレビのブラウン管向けに500℃の加工工程に耐えられる商品管理ラベルの作成の依頼があり、苦労の末製品化した。

その後ブラウン管は生産中止となり、技術はいったんお蔵入りする。10年ほどしてカナダのアルミ精錬会社から依頼が届いた。

最高1,000℃の対象物への直接貼付が可能。

常温で貼り付けた後に熱する以前のケース(Cold to Hot)と異なり、今度は500℃に熱せられたアルミ塊に貼り付ける「Hot to Cold」のラベルで「当初はCold to Hotで成功したシールの発想にとらわれて埒が明かず、開発者は一度諦めかけたと聞いた」と岡山氏。

根気強く実験を重ねた結果、押し付けながらアルミと溶着する樹脂、高温下での樹脂の変形を防ぐ土台となる基材、それに無機材で白い印字面を作るコーティング材による3層構造のラベルが完成をみた。併せて貼り付ける機械も開発し、採用が決まった。

それまでは手書きや刻印などでロット番号をつけるしかなく人手に頼らざるを得なかった商品管理がバーコードに代わったことにより、安全になり、ミスが減り、省人化、作業時間の短縮にもつながった。

刻印などのように熱処理工程で途切れることなくID管理ができ、ヒューマンエラーの削減につながった。

同様の工程を持つ鉄鋼メーカーへの採用が一気に広がると期待されたが「どこも保守的で営業も苦労が絶えなかった」と岡山氏。ようやく日本の大手鉄鋼メーカーに採用されたのはそこからまた10年ほど経過した2013年のこと。

取引先が広がるにつれ耐熱要求のレベルも700℃、1,000℃と上がっていった。そのたび、ふさわしい樹脂や基材の研究を行い、製品化。

3年前からは鉄鋼関連以外にもセラミック、電子機器、金型など高温環境下での加工が必要な領域へと採用が広がり、「ここ3年ほどでようやく伸びが顕著になってきた」と野崎氏は手ごたえを語る。

開拓できる分野はまだ限りなくあるはずだという。「高熱という条件の上に耐薬品性といったさまざまな機能性を付加し、潜在市場を開拓していきたい」とニッチトップをさらに極めていこうとしている。

執行役員 第一営業部 部長 岡山氏(写真左)と、第一営業部 FA課 課長 野崎 氏(写真右)

(取材・文/山口裕史)

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