2025年、ケガゼロモビリティへの挑戦
保育園への送り迎えやお買い物など、小さな子どもを連れての外出には欠かせないアイテムとなっている自転車用チャイルドシート。国内外の自転車メーカーや自転車用パーツメーカーがしのぎを削るなか、OEM供給も含めると市場の6~7割を占有するといわれるのが、東大阪市に拠点を構えるオージーケー技研だ。
同社の創業は1941年。セルロイド加工品メーカーとして出発した。その後、グリップやホイール、ヘルメットなど、自転車関連の部品・用品に事業の軸足を移していく。チャイルドシートに取り組み始めたのは、1990年代のことだ。「OEM、ODMでの供給先が大幅に減ったため、このままでは自社の工場で作るものがなくなってしまうという状況のなか、チャレンジしたのがチャイルドシートの生産です。日本製ならではの安全・安心の製品であれば勝ち目があると考えての挑戦でした」。
この挑戦を支えたのが、同社がプラスチック製品の成形メーカーとして長い時間をかけて蓄積してきたノウハウだ。当時のチャイルドシートは、部品の一部に鉄を使っていた。一見すると強度が高そうな鉄だが、サビによる劣化という弱点がある。実際、折れた鉄の部品によって子どもがケガをすることもあったという。一方、プラスチックは素材や加工方法を工夫すれば、雨や日光、気温の変化にも十分耐えることができ、長期にわたって安全に使用できる。“プラスチックのプロ”だからこそ生み出せた「オールプラスチックの安全なチャイルドシート」は市場の支持を得て、「自転車用チャイルドシートいえばオージーケー」といわれる基礎を築いた。
自転車用チャイルドシートのリーディングカンパニーとなった同社は今、「ケガゼロミッション2025」を掲げ、より安全な製品の提供に取り組んでいる。フラッグシップモデルでもある「GRANDIA」シリーズでは、転倒時でも頭を270°守るヘッドガードを搭載。さらにシートベルトの着用率向上を後押しすべく、ワンタッチで固定できるマグネットバックルなどを備えた「ハグシステム」と呼ばれる独自の機構を開発した。
また、自転車のパーツメーカーから「家族の移動を創造するメーカー」への飛躍もめざしている。そのための第一弾商品として、子どもを自転車に乗せながらでも大きな荷物を運ぶことができるサイクルトレーラー「Camily 」を市場に送り出した。
「自転車の可能性をもっともっと広げていきたいです。かつて双子用自転車を開発したように、部品メーカーの固定概念から脱却して、さまざまなものづくりに挑戦していきたいですね。やりたいことがたくさんあって、忙しすぎるのが今の悩みです」。
(取材・文/松本守永)