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瞬時のタイム計測で白熱のレースを支える

2022.06.06

アスリートたちが時速数十キロのスピードでサーキットや市街地を駆け抜ける自転車レース。レースタイム自動計測技術は、ときに紙一重の差にもなる勝敗を正確に見極め、即座に選手や観客に結果を知らせてくれる。この分野のパイオニアであり、多くのレースでタイム計測を任されているのが、マトリックスだ。

同社の技術は、大別するとRFID(Radio Frequency Identification)と呼ばれている。その代表例が、「パッシブタグ」と呼ばれるもので、今では交通系のICカードにも利用されている。パッシブタグはタグ自身に電池がないため、リーダにかざした時に給電する。軽量化しやすく安価に生産できるという強みがあるが、「電波が届く距離が限られるという弱点もあり、複数の自転車が高速で通過するというレースの性質を考えると、パッシブタグでの正確な計測は実現できませんでした」。

「スズカ8時間エンデューロ」をはじめ、さまざまなレースを企画し計測も行っている。

そこで同社が開発したのが、「セミアクティブタグ」と呼ばれる独自のRFIDだ。セミアクティブタグはタグ自体に電池を内蔵しているため、遠くまで電波を届けることができるうえ、他の電波の影響も受けにくい。「レースでは、スタート・フィニッシュラインに磁界を発生させる装置を設置し、タグをつけた自転車がそこを通過することで磁界をキャッチし、電波を発信します」。


同じように電池を内蔵する「アクティブタグ」は常に電波を発信し続けるので電池の消耗が激しく、ゴール通過を特定できないという弱点を持つが、セミアクティブタグは磁界の中でだけ電波を発信するため、電池の消耗を抑えゴール通過も特定できる。これらの強みが、自転車レースに求められる要件と合致した。「開発に取り組んだ1990年代までは、ビデオカメラと目視で計測が行われていました。その中で自動化を可能にした当社の技術は高い評価を受け、瞬く間に業界のスタンダードとなりました」。

セミアクティブタグは磁界の中でだけ電波を発信するため、電池の消耗を抑えゴール通過も特定できる。

同社では計測機器の開発・販売にとどまらず、レース当日の計測業務も行っている。計測をトータルに「サービス」として提供していることも、同社が高い評価を受けた要因の一つだ。その正確性・即時性は競技の枠を越えてスポーツ分野で定評を得ており、マラソンなどでもタイム計測を任されるようになっている。さらに、セミアクティブタグの特色を活かせる分野として、子どもの登下校の見守りや病院などでの認知症高齢者の見守り、工事現場での安全確保などに技術を応用している。

自転車レースでのタイム計測から始まった技術にさらに磨きをかけ、より良い社会の実現に貢献することが、現在の同社の目標だ。

宣伝部課長 岡島 直樹氏

(取材・文/松本守永)

株式会社マトリックス

宣伝部 課長

岡島 直樹氏

https://matrix-inc.co.jp

事業内容/セミアクティブRFIDシステムの開発・製造・販売