Bplatz press

世界に届く技術で「攻め」も「守り」も

2022.06.01

「自転車づくりは家業で、生活の一部に工場がありました。中学生の頃から溶接を手伝い、大学に進学する前には職人以上の技術が自然と身に付いていましたね」と振り返る、東洋フレーム株式会社代表の石垣氏。同社は、1973年にナショナル(現・パナソニック)自転車のパートナー企業としてスタート。「創業者は父親。今思えば、徹底して技術にこだわるエンジニアの父から、相当鍛えられたと思います」。

実際、プロたちから愛される自転車を製作する同社の技術は世界トップクラスだ。1996年のアトランタオリンピックでは、海外メーカーからOEMの依頼を受け、石垣氏がマウンテンバイク(MTB)を製作。そのMTBを使用した選手は、銀メダルを受賞した。

同じ頃、同社は一つの転機を迎える、自社ブランドの立ち上げだ。石垣氏は専務として、新規事業の陣頭指揮をとった。「既に業界内で知られていたので、自社製品開発後の販路拡大は比較的スムーズでした」と当時を述懐する。最初は卸や小売を通して販売していたが、今は直接ユーザーに届けるビジネスモデルを構築した。

一台一台職人が手作りしている。

そんな同社が満を持して5年前にリリースしたのが『電動マウンテンバイク(e-MTB)』。「開発を決意したのは、シマノさんがモーターユニットを販売してくれたから。社内の職人たちからは、新たな商品開発に挑むことを“大変そう”と言われたが、これしかないと決意しました」。

日本での知名度は“知る人ぞ知る”というe-MTBだが、今世界中が注目しているホットな分野。世界大会が開催されると、MTBのオリンピック金メダル選手が参加するほどの大きなムーブメントを起こしている。

開発時のこだわりは細部に及ぶが、「一番大切にしているのは“乗り味”。運転時の姿勢や操作性はもちろんですが、電動特有の特徴として、普段、人力だけではたどり着けないような高所まで、アシストで登れてしまいます。そのため、ショックの吸収性、ディスクブレーキの効き具合といった堅牢性がさらに求められるのです。一切妥協せずに、創り上げましたよ」と語る。社運を賭けた自信作は、5年で1000台以上を販売。ふるさと納税の返礼品としても扱われており、人気は上々だ。

ふるさと納税でも取り扱っているe-MTB“AEB”。

高い技術が認められ、日本のみならず海外のユーザーからも問い合わせがあるが、「世界進出のような拡大路線は考えていません」ときっぱり。「やるからには、メイドインジャパンの自転車が、世界のトップの品質になることをめざしている。ただ、自社としては自分たちの目の届く範囲でしっかり良いモノを創っていく」というスタンスだ。

“チャレンジ精神”と“丁寧な経営”という両輪を大切にしながら、ブレない運転を続けていく企業だ。

Builder/President 石垣 鉄也氏

(取材・文/仲西俊光)

東洋フレーム株式会社

Builder/President

石垣 鉄也氏

https://toyoframe.com

事業内容/プロユース自転車の製造・販売