女性の働く環境を変えたい!すべての人の人生に助産師が寄り添える社会へ
紀元前1,500年の太古から存在したと言われる助産師。日本では産婆とも呼ばれ、出産介助だけでなく、その後の子育てや体の不調など、女性の生涯を支えていた。
しかし、戦後の数十年で病院出産が主流になり、出産から数日後には退院。それ以降の日常に助産師が関わることはほとんどなくなっていった。
そこで代表の岸畑氏が立ち上げたのが、産前産後の女性のケアや助産師のサポート、企業の顧問助産師事業を行うWith Midwife。
「病院の中だけ、出産のときだけ、を支えるのではなく、こちらから出向いて家庭や社会に溶け込むことができれば、産後うつや虐待の解決、働きやすさ向上に繋がると考えました」。
立ち上げから2か月後、新型コロナウイルスによる自粛の波がやってきた。対面サービスがすべて中止になったことで、オンライン化が加速。
岸畑氏は、構想段階だった「国内外の助産師を検索できるプラットフォーム」を前倒しで構築する。その傍ら、対面だからできる強みも再認識し、逆風を追い風に変えてきた。
コロナ禍で病院での立会い出産が難しい時期は、離れた場所にいる夫に聞いてもらえるように産声を録音、現場にいる医療者だからこそできるサポートを行う。
顧問助産師としては、母子の様子や寄り添い方などのアドバイスを夫に伝え不安を取り除くなど、オンラインでのサービスにも大きな可能性を見出していた。
出産前のパパママクラスもその一つだ。
「赤ちゃんのお世話の仕方を画面越しにお伝えするのですが、各家庭と直接つながるので日常の夫婦関係も垣間見えます。たとえば『ガーゼはありますか?』と問いかけて、取りに行くのが妻なのか、夫なのか。『今、おなかが大きくて大変なので、助けてあげてくださいね』と、私からパパにお願いすることもあります」。
一人ひとりの人生、家族に寄り添うWith Midwifeの助産師たち。サービスの対象は個人から企業へと広がっている。
妊活、不妊治療、仕事との両立、夫婦関係の悩み。それらは女性社員特有のものではなく、パートナーである男性社員も同時に支えられるべき問題だ。
社員が健やかなプライベートと仕事を両立できなければ、企業の存続は危うい。就活生に選ばれる会社でなければ、将来の発展も見通せない。
産業医と同じく企業に顧問助産師を置くことは「福利厚生ではなく経営戦略の一部でもある」と考えている。
これまで病院や自治体が「点」で提供していたサービスを「線」でつなげ、人生全体を支える社会的存在に。
出産という枠組みを超え、助産師の仕事をリブランディングしていく。
▶ 起業をめざしている人へ
アイデアは、行動に移すからこそ価値がある!
(取材・文/北浦あかね 写真/福永浩二)