会社の復活に「着火」したのは、あのブルーの固形燃料だった
業務用洗剤のメーカーとして今や東証1部に上場する株式会社ニイタカは、経営がまだ脆弱だった創業期に二度、倒産を経験したという。
「その復活の起爆剤になったのが、旅館や和食店の一人用鍋の下でチロチロと炎を上げている固形燃料です」と管理本部長の佐古氏。
開発の時期は1970年代初め、大阪万博のすぐ後で高度経済成長たけなわの頃。企業などの団体旅行が盛んで、ドライブインや旅館では大人数に対応する一人用鍋が決まったように供され、固形燃料のニーズが高まっていた。
大学で化学を専攻した現会長が「簡単だろう」と取り掛かるも、意外と製品化までには苦労したという。固形燃料は約90%がアルコールで残りが固形化するための固化剤だが、その微妙な配合が難しいのだ。
しかし、ひとたび製品化に成功すると順調に売上げを伸ばし、会社の安定化に貢献した。
ニイタカの真骨頂は、その後にある。
固形燃料はもともと塊を一斗缶に入れて供給され、旅館の仲居さんらがスプーンですくって使用していた。それでは手間がかかる上、使用する量にばらつきが出て、客一人ひとりの鍋の煮え具合にも差がつく原因になった。
そんな折、有馬の有名温泉旅館から「小分けにしてくれないか」と要望が入る。木枠にピアノ線を取り付けて1個ずつ角形にカッティングしたところ好評を博し、やがて円形に。
アルコール分の蒸発を防ぐフィルムでラッピングを施し、後始末が楽なようにアルミホイルで下部を包むという改善を加えていった。
社内で新しい鍋メニューも企画して旅館などに提案。あわせて重い鉄に代わるアルミの一人用鍋なども開発した。
さらに、同社の固形燃料の優位性を決定づけたのは、製造の自動化システムの導入。大量注文にも確実に対応できる生産力と、手作業で小分けする他社では真似のできない製品の均一性が実現した。
一時は団体旅行などの減少で売上げが下がったものの、外食チェーンの一人用鍋メニューの流行で当時の売上げまで回復。その結果、現在固形燃料の約7割のシェアを獲得している。
「売上げからすれば、今では洗剤部門の方が大きいですが、固形燃料は会社の屋台骨を支えるベースになっています」と佐古氏。今後は中国など鍋料理をもつ海外の国々にも販路開拓の視野を広げている。
(取材・文/山蔭ヒラク)