シャンプー市場に新旋風を巻き起こした「BOTANIST」はいかにして生まれたのか
大手ブランドがひしめくシャンプー市場で存在感を放っている新興ブランド「BOTANIST」。
レッドオーシャンとも言われる市場で、開発責任者の藤岡礼記氏が大切にしたのは、ゴールを定めた上で、製造元、販売先に通いつめ、現実的な解を見つけ出す作業だった。
―― BOTANISTの開発に至るまでの経緯を教えてください
私が大学3年生の時に、すでに学生起業から事業をしていた現社長の大西と出会い、私を含めた3人が合流しました。当時は、女性ファッション誌の表紙に読者モデルとして出ていた女子大生の方たちとコラボしてTシャツや化粧品をファブレスで作って販売していました。広告代理業もやっていましたし、ガラケー時代からEコマースも手がけていました。「楽天市場」などで販売ランキング1位の実績をいくつも積み重ねて、健康食品、化粧品などのヒット商品を続々と送り出していました。
その後、ディスカウントストアの「ドン・キホーテ」のバイヤーさんと知り合う機会があり、読者モデルとのコラボでの実績から、ヘアアイロンを商品化することとなり、これが爆発的に売れました。ユーザーさんのお母さまから「くせ毛が原因で学校に行きたくないと言っていた娘の髪がストレートになり、娘が喜んで学校に行くようになった」と手紙をいただいたんです。自分たちのやるべき仕事は、「売上を必死に追い求めていくということだけじゃなくて、商品を通じてお客様に幸せな体験を届けることだ」と。そこから2、3年かけて「Chain of Happiness」の経営理念にたどりつきました。
とはいえ売上げは、より多くの人に幸せを提供した指標ともなるので、ミッションの実現には、より会社を成長させる必要があります。しかしながら、当時の売上は数10億円程度。どうしたらそこに届くのか考えた時に、「マーケットサイズの大きい商品で勝たないとダメだ」となり、目を付けたのが1,500億円市場のシャンプーでした。そこで、大西から「藤岡、シャンプーをつくろう」と。
―― どういう戦略を立てたのですか
私が最初に立てた仮説は「機能性オーガニックシャンプー」でした。当時、シャンプーに含まれるシリコンに対しての賛否両論がありましたので、それに代わるもので使用感を良くしたうえで、オーガニックにもこだわろうとしたのです。製造委託できそうなメーカーさんを探し出し、開発が可能かどうかご相談したところ、数社がなんとか開発できるかもしれないと答えてくれましたが、検証を重ねるうちに、オーガニックにこだわりすぎるとコストとパフォーマンスの両立が大変難しいということがわかってきました。
ある日、「自然と科学の融合」という表現に出会い、このバランスが大事なんだと気づきました。オーガニックにこだわりすぎずに、自然由来という言葉に置き換え、植物成分由来の原料をバランスよく使うことで、より良い製品パフォーマンスにこだわることができました。そこから「BOTANICAL」という表現が生まれました。しかしながら、価格の壁がありました。
―― どのように突破したのですか?
I-neが当時すでに実績を出していた「楽天市場ランキング1位」を全面に打ち出して、ドラッグストアで販売してもらえたら、お客さまは高い価格でも興味を持ってくれるのではないかと考えました。
また、パッケージについてはI-neのブランディングのトップが「シンプルに透明で行きたい」と本質的な表現を突き詰めていきました。確かに、店頭で並べてみると、華美な色使いの他社製品との対比で非常に目立っていました。
前年の6月から開発をスタートして1月に発売したので開発期間は約8カ月、まずは、楽天市場さんでしっかりとランキング1位の実績を作り、さらに当時まだ黎明期だったInstagramを使ったデジタルプロモーションを展開していきました。そうして、オフラインでもバラエティショップ、ドラッグストアで実績が出始め、さらにほかの小売店も扱ってくださるようになりました。