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シャンプー市場に新旋風を巻き起こした「BOTANIST」はいかにして生まれたのか

2021.10.01

 
―― BOTANISTの成功体験をどのように生かしたのでしょうか

 
実はBOTANISTで生み出した収益で、新たな商品開発に取り組んでいたのですが、ヒット商品を出し続けることの難しさを痛感しました。周囲からも「次はどんな商品を作ってくれるんですか」「BOTANISTを超える商品をお願いします」と言われながら、それができず、私個人的にはBOTANISTの呪縛から抜け出せずにいました。
ただ、そうした経験が教訓になって、まずは小さく試して、それぞれの段階で目標数値をクリアしたら次に進んでいこうというI-ne独自のブランドマネジメントシステム「IPTOS」もできあがりましたし、商品開発にAIを活用する手法も新たに生み出すことができました。

 

 
BOTANISTから得た大きなことは、最先端の技術で安心、安全で効果的な商品を生み出していく、ブランドミッション「植物とともに生きる」をしっかりと生活者に伝えていく、という私たちのスタンスが明確化できたことです。この原点はまちがいなくBOTANISTから築くことができました。プロダクトアウトとかマーケットインっていうのはあくまでも手段であって、この世の中をどうやってよくしたいか、人々にどんな幸せを提供したいかという思いから掘り下げて商品化したことが、今のI-neのパーパス・ドリブンの考え方につながっています。

 

 
―― 昨年上場を果たされました。今後の展開について教えてください

 
マーケティングVer.1が奇跡的にはまってBOTANISTがヒットし、長年苦しんだ中でようやくVer.2が見えてきました。フレームは一緒なのですが、社員のレベル、ナレッジ、社外の知見、タイミング、選択と集中の取捨選択も含め、それぞれがブラッシュアップされているのを感じています。それを生かしてヘアケア商品においては勝ち続けたいですし、マーケットサイズのより大きいスキンケア商品にもチャレンジしていきたいと思っています。

海外については過去に20か国ほどトライアルで展開をしたうえで一昨年から中国市場にフォーカスしています。ECに力を入れつつ、今後はオフライン店舗での配架にも注力していきたいと考えています。日本で成功したやり方と、中国ならではの生活者の好みをうまくバランスを取りながら伸ばしていければと考えています。

 
―― バランスという言葉が多く出てきました

 
私は小さい頃から親に「みんなどこかしら良いところを持っているのだから、みんなと仲良くしなさい」といわれていました。大学生の頃にお世話になった先生の影響もあって人生のモットーは「中道」と考えています。大局を知ったうえでその中でどうバランスをとれるかが人生のミッションだと思っています。だからこそ常に心がけているのは、両極端の意見を聞いて、それぞれがどうしてそのように考えるのかを知るように努めています。例えば、流行に敏感でBOTANISTをすぐに取り入れてくださるような方から、BOTANISTに込めた思いを知ってもピンとこない方までいろんな考えを知る、ということでしょうか。それを知ったうえで、じゃあその間にいる大多数の人に届けるものをどうしたら作れるのか考えていきたいと思っています。

 

 
(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

株式会社I-ne

取締役 マーケティング本部 本部長

藤岡 礼記氏

https://i-ne.co.jp

美容関連商品の企画開発、製造及び販売