栄養をまるごと食べる擂茶を日本中に広めたい
「もっと人に喜ばれる仕事を自分でしたい」と40歳を機に19年勤めていた会社を辞めた。家族に3カ月の猶予をもらい、何をするかを探しながら起業をめざした。
期限まで10日と迫った頃、家族で訪れた台湾旅行で客家擂茶(はっかれいちゃ)と出会った。大豆や大麦など20種類以上の豆や穀物を擂(す)って作られた食べるお茶だ。
その美味しさに感動し「これを日本に広めたい」と帰国後すぐに擂茶について調べた。当時、日本での取り扱いは1店舗のみ。ネットで販売することを考え、起業向けの講座を受講し、ビジネスプランを練り上げた。
早速、仕入れのために台湾にわたり、現地に住む知人の協力で擂茶メーカーの副社長へコンタクトが取れた。しかし最初はほぼ門前払い状態。なんとか食らいつき「絶対に日本のお客様は喜んでくれる。日本に広めたい!」と熱い想いを何度も伝えたところ、擂茶のあらましや客家民族の歴史や文化も伝えることを条件に取引が決まった。
しかし、中国語がわからないため、まずメールのやりとりに時間がかかった。商品を輸入するために検疫所への書類を用意するのも中国語を訳すことから。原材料に輸入できない成分がないか検査機関へ依頼し、関空の検疫所へ何度も足を運んだ。ようやく商品が届いたのは注文してから半年後だった。
その後はイベントに出店し地道にPRしつつ、薬膳料理店などでも販売してもらえるようになった。その頃、擂茶メーカーの副社長が来日。松本氏のがんばりが認められ、日本の正規販売店として専売契約を交わした。
イベント出店や取引先が増えていく一方で、輸送コストが資金繰りを圧迫する。固定費を削れるだけ削ってもどうしようもない状態に陥ったが、擂茶メーカーが支払い条件を緩和してくれたため危機を乗り越えられたという。
現在は、全国各地で行われるマルシェなどのイベントを中心に出店。口コミやSNSの効果もあり手応えを感じている。「栄養たっぷりでたくさんの方に喜ばれる擂茶を丁寧に日本中に広めていきたい」と語ってくれた。
(取材・文/三枝ゆり 写真/福永浩二)
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