自問の末に導き出した「起業」への道
「マウンテンゴリラさ~ん」
取引銀行の受付でそう社名を呼ばれるのは「いまでも恥ずかしい。まだ達観していないですね」と笑う井口氏。2014年にシステム開発会社を設立した際、事業パートナーと相談してつけたのが“マウンテンゴリラ”という社名だ。「500案ほど社名候補を出し合い、お客様に親しみを持ってもらうために決めました」と話す。
大手メーカーでエンジニアとして活躍。数百万人が利用する製品開発に携わるなど仕事は充実していたが、「技術で人を笑顔に変える仕事をもっとお客様の近くでやってみたい」という思いで起業を決意した。
もっとも、学生時代から「起業」には興味を持っていたが、なかなか一歩を踏み出せなかった。「本田宗一郎や松下幸之助のような、ものづくり企業を率いた経営者が好きで、起業に漠然と憧れを抱いていました。でもそれは夢物語、まず大企業で力をつけてから、そんなふうに考えたんです」。
就職し、気づけば10年。エンジニアとして頭角を現し、リーダーとして人をまとめる立場になっていた。「しかし人生は一度きり。俺は何がしたいんや」。プロジェクトがひと段落した際に改めて自問し、「起業に憧れていた自分、エンジニアの自分、リーダーとしての自分、この3つを持つ今なら独立できると思ったんです」。
1年後に退職すると期限を決め、多くの経営者に会いに行き話を聞いた。そしてエンジニアの知り合いを事業パートナーに迎え入れ、念願の起業を実現。システム開発と技術者派遣を2本柱に事業をスタートさせた。
3期目を迎えた現在は技術者派遣をベースとしながら、自社製品の開発に力を入れている。1つは、人を検知してスマホに通知するシステム。そしてもう1つは、これまで紙ベースで管理していた帳票や日報などを電子化し、タブレットで管理できるシステムだ。「ITシステムは高い」「使い方がわからない」といった顧客の声を受けて開発したオーダーメイドのシステムは月5,000円から始められる。
目標は、自社で開発した製品の売上げを伸ばすこと。さらに「エンジニアが楽しめる会社にしたい」と力を込める。エンジニアが自身の個性を発揮し、仕事を楽しめばよい製品が生まれる。「その結果、お客様に喜んでいただき、利益もついてくると思いますから」。
(取材・文/高橋武男 写真/福永浩二)
井口さんも利用した
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