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社会のせいにするな― 起業を決意したひと言

2017.04.04

大学時代にロシアからの交換留学生と結婚し、重度聴覚障がいの娘を授かった。役所ではたくさんの福祉制度を案内され、「日本で育てられてよかった」と当初は思ったという。「ところが妻が海外の文献を読んで勉強したところ、日本の療育システムは遅れていることがわかったんです」。

しかし、大阪には求めるような専門の施設が見当たらない。東京と名古屋の施設を探し当てて娘を通わせるようになり、関係者に日本の制度についての不満をぶつけたところ、「社会のせいにしてはいけません。自分で解決できるよう努力しなさい」というひと言を突きつけられた。

「責任転嫁したらあかん。自分でなにかやってみよう」。考えを切り替えた家住氏は転職し、障がい者雇用の人事担当者として3年間、全国の福祉施設や支援学校に足を運ぶことになる。

「そこで見た光景は、必ずしも子どもたちの明るい未来につながるものではないと感じた」と振り返るように、障がいを持った人たちが社会に適応し、働けるようになるための療育や就労支援が学齢期に十分行われていない現実を目の当たりにする。

「これでは未来が拓かれない。障がいを持った子どもたちが自分の意志で未来を歩める、選択できる社会をつくりたい」――その思いで起業を決意した同氏は、前職で障がい者の支援を行っていた山本竜大氏を事業パートナーに迎えて2016年3月、障がい児の就職・進学をサポートする放課後デイサービス「すたぁりっと」を開所した。

すたぁりっとでは放課後の時間を利用し、学齢期の障がい児に成長を促す訓練やソーシャルスキルトレーニングなどの支援を実施。「障がいの種別に関わらず、環境次第で健常者に負けない力を身につけられる」と断言する。

療育システムの整備だけでなく、前職の経験を活かして受け入れ先の企業の開拓、さらには障がい者雇用を検討している企業に対するコンサルティング事業にも注力し、就職・進学の出口までサポートできる仕組みをつくり上げた。

「障がいを持った子どもたちが社会で活躍し、受け入れた企業や教育機関も喜んでくれる。そんなモデルとして全国展開していくつもりです」。

そう力強く宣言する家住氏は向こう3年間で近畿圏内に25施設まで拡充し、株式上場もめざす。さらに、将来的には障がい者専用住居兼デイサービス事業の展開を見据えている。

「『できないことを社会のせいにしてはいけない』と言われたことがキッカケですが、やはり子を思う親心が私の原動力です」と目標に向かって邁進している。

代表取締役 家住 教志氏

(取材・文/高橋武男 写真/福永浩二)

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※2017年3月時点。個人信用調査による未調達を除く

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事業内容/障がい児向け進路支援型の放課後デイサービスの展開