2010年、創業100年を機にオンデマンド印刷機を導入した。
大量印刷が得意な従来型のオフセット印刷機と印刷の仕上がり具合を比較したがる業界の声をよそに、吉田氏はオンデマンド印刷が得意とする、1部からでも印刷できること、短納期に対応できることに着目し新たな顧客を虎視眈々と狙っていた。
「オンデマンド印刷機ならではの強みをどう生かせるかそればかりを考えていました」。
▲代表取締役社長 吉田 匡廣氏
小学生の時に読んだ「キャプテン翼」がきっかけになってサッカーにのめり込んだ。大人になってからは地元のJリーグチームを応援し、試合観戦を欠かさなかった。
チームに協賛したことがきっかけになって接点ができ、提案した印刷商品の採用が決まった。試合のスケジュール日程を手帳にあらかじめ印刷し、好きな選手の背番号の入った表紙に差し替えられるというファン視点の商品が決め手になった。
また、ユニフォームTシャツはシーズン中盤の夏場以降に売れ行きが鈍っていく。そこで限定ポスターなどのノベルティをおまけに付ける販促策を提案した。そうしたファン視点からの企画力も相まって、取引につながったチームも全国に広がりつつある。
長男の龍平君がファンの選手が所属しているJリーグチームに提案が受け入れられ、その選手のポスターを作ったときには出来上がったものを見せて長男の部屋に貼った。
海外のアーティストに夢中な長女の裕美さんがポスターを部屋に貼っているのをみて、会社でポスターを印刷していることを話しかける。
3人の子どもたちは、毎年、会社の近くにあるお墓参りのついでに会社に立ち寄るという。しかし工場で印刷機に触れたのはこの日が初めて。
インクボトルの色を混ぜて色ができること、いろいろな種類の紙があることを話し、ざらざらした紙を手に取った次男の泰我(たいが)君が「これは何に使われるの」と尋ねた。
「あらゆる業界にかかわれることが印刷業の面白いところ。僕が大好きなサッカーにかかわれたように自分の好きなことにかかわれるチャンスのある業界だと感じてもらえれば」。
決して継いでほしいとは口に出さない。「印刷という仕事も面白そうだなと将来の選択肢の一つに入れてくれれば」。
それが吉田氏のやり方だ。
(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)
事業内容/販売促進策の企画・提案、商業印刷
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