Don’t burn the bridge.
藻の研究をしていた大学時代から「将来は起業したい」と考えていた。事業分野は、藻とは一見接点のない教育関係。
「研究内容そのものより、知らないことを知るのが好きなんです。自分の性格をビジネスのヒントにして、社会人向けに教育サービスをつくろうと考えました」と辻川氏は振り返る。
ただ、日本の社会人教育のマーケットは大きくないため、事業拡大のためには海外展開が必要と考えた。そこで大学卒業後、グローバル企業のP&Gに入社。「30歳までに独立」と期限を定めて働き始めた。
R&D(研究開発)部門に配属となり、新商品のアジア展開をサポートする業務に従事。国際色豊かな職場で英語もマスターし、30歳まで3年を残した2012年に転機が訪れる。「シンガポールに転勤の話が来て、このタイミングで思い切れというメッセージだと受け取り起業に踏み切りました」。
退職前、外国人の上司から「Don’t burn the bridge.」という言葉をもらった。人との縁を自分から切る真似はするな、将来誰が助けてくれるかわからないから、人とのつながりは大切にしろという意味だ。
その言葉の意味を起業後すぐに実感することとなる。
27歳でシェアウィズを立ち上げたあと、Webアプリの開発者を探し回った。最終的に高校時代のバスケ部の友人が適任者を紹介してくれた。自社で開発すれば3年はかかるようなサービスを3ヶ月でリリースすることができた。
ほかにも過去に挨拶しただけの人が数年後、財務的に厳しい時期に仕事を紹介してくれて難を逃れた。のちにその人は入社し、現在は東京支店の責任者を務めている。出会ったその時はわからなくても、いつか誰かが助けてくれるかもしれない。「上司に言われたご縁の大切さを痛感します」。
そう語る同氏は交流会などでガツガツ名刺を配るタイプではない。「今後も一期一会を大切に、出会った人と深くお付き合いしていきたいですね」。
▲株式会社シェアウィズ 代表取締役社長 辻川 友紀氏
(文・写真/高橋武男)