200年続く老舗おこしメーカー7代目がめざすのは老舗×ベンチャーのハイブリッド型企業。
―大丸神戸店では9月に新たなブランド「Matthew&Chris.P(マシュー&クリスピー)」をオープンしました。
「pon pon Ja pon」では私が主導的に商品開発を担当していたのですが、私がやりたかったのは商品開発ではなく、商品開発ができる組織をつくることでした。
入社してしばらくした頃、ある人に「大きな個人商店」だと揶揄されました。当時の従業員数は100人程度でしたが、まだまだ企業の体を成しておらず、社長が号令を出して社員が動くという、個人商店の経営から脱していなかったのです。その言葉を聞いて以来、社員が自身で考えて動く、組織としての企業にしていかなければと強く思うようになりました。
そのため商品企画に関しては、新しい風穴を私が開けて、方向性も示したので、次は社員に任せていこうと考えました。たまたまある社員がアメリカへ出張に行った際に、ライスクリスピートリートというアメリカのスーパーで売られている人気のお菓子を見て、やってみたい、と提案してくれました。
なぜなら、溶かしたマシュマロにお米のシリアルを混ぜた、いわば「アメリカ版おこし」だったからです。それが「Matthew&Chris.P」に繋がりました。
何を守るかを考えたとき、一番は人が働く組織を残すこと、次に社名を残すこと、そしておこしを残すことだと思っています。おこしがなくなれば、創業家がいる必要がなくなります。逆に創業家がいる以上どんなことがあってもおこしにこだわっていきたい。
ただ、おこしだけでは若い職人を採用し、育てるのは難しく、技術を伝承するのは容易ではありません。チョコレートやクッキーも手がけることで若い職人を呼び込む入り口になると思っています。200年余の歴史で培ってきた「米を砕いて砂糖で固める」というおこしづくりのベースと取引先との信頼関係を大切にしながら、ますます新しいことに挑戦していきたいと考えています。
「次の代にどう任せるか」これは、先代から老舗の継承というバトンを託されたと同時に、私が考え始めなければならない大きなテーマです。めざしているのは老舗×ベンチャーのハイブリッド型企業。どうすれば時代時代に必要とされる存在であり続けられるのか、長続きする組織としてバトンを繋いでいけるか、試行錯誤しながら挑戦を続けていこうと思います。
(取材・文/山口裕史 写真/高田裕司)
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株式会社あみだ池大黒
専務取締役
小林 昌平氏
事業内容/1805年創業の老舗。おこしを中心に「大阪みやげ」を展開。百貨店のほか、駅、空港、テーマパークなどで販売。