【ロングインタビュー】新興国総オンライン化をめざし、BOPマーケットに挑む
―フィリピンでは何を。
まず現地の英語学校に入学し、英語学校のオペレーションを手伝いながら英語の勉強をしていました。モバイルにかかわるビジネスをしたいと考えていたので、先生や友達と一緒に遊んだりしながら、人々がどのようにモバイルを活用しているのか、いくらくらい使っていて、どのようなサービスを使っているのかなどをリサーチしていました。
フィリピンに行って2週間経ったころに、英語学校の経営者が投資家の方を紹介してくださいました。
せっかくの機会だったので当時私が考えていた事業計画をプレゼンしたところ、全くダメだとけちょんけちょんにやられました。悔しいので、そこから現地のマーケットを徹底的に調べて事業計画を磨きなおし、1ヵ月後に改めてプレゼンする機会をいただきました。
そうしたら、「オモロいやないか!」って(笑)。「どうするんや、いつからやるん。会社やるならお金も出す、すぐにシンガポールに来い!」と。突然の話で非常に驚きましたが、考えた末に、その船に乗ろうと。
―どのようなビジネスプランだったのでしょうか。
貧困を解決するには機会を提供することが重要で、そしてその機会はインターネットにつなぐことでかなりの部分を解決できると考えています。学校に行かなくても教育もインターネットでできる。医療のアドバイスだってできる。仕事探しはもちろん、仕事自体だってインターネットを通じて行なって、収入を得る人だっている。
だれもが自由にインターネットにつながることができれば世界は変わるという信念が根底にあります。世界人口のうち、インターネットとつながる人々は全体の3分の1ほどだと言われており、未だに40億人以上がオフライン環境のままです。私たちは、そのような人々が自由にインターネットへアクセスできる環境をつくりたい。
そのためには、松下幸之助さんが掲げていた「水道哲学」と同じだと考えておりまして、蛇口をひねればすぐに水が出てくるくらい安価に使いやすくすることにこそ価値がある。そのため、新興国のモバイルインターネットの通信料を無料に近づけることに挑戦していきたいと思っています。
日本のように100%近い携帯電話の通信料金がポストペイド(後払い方式)というのは世界的にも珍しく、フィリピンも含めて多くの国ではプリペイド(前払い方式)が主流です。フィリピンではスマートフォンが急速に普及していて保有率もほぼ100%なのですが、店で通信料を購入しては使い切る、そしてまた購入する、といった行為を繰り返す必要があるんです。
だから人々は無駄遣いしないように、ネット利用を必要最小限に抑えていて、多くの人々はふだんはインターネットに繋がっておりません。
そこで私は、テレビやラジオと同じように、広告モデルを使って誰もがインターネットに接続できる事業を検討しました。具体的には、スマートフォンを開けたときに画面に広告が表示され、それを閲覧するとポイントがたまるようにして、モバイル通信料に充てることができるという仕組みです。
人々は特別の操作を不要とし、日常通り携帯電話を使っているだけで、少しずつ携帯料金が溜まっていきます。
―どのような企業が広告主になっているのでしょうか。
フィリピンの広告市場は、FMCGといわれる消費財系の商品や食品などを扱っている企業が多くの割合を占めています。我々のサービスも同様で、具体的にはユニリーバ、インテル、マクドナルド、ネスレなどをはじめとする多くのグローバル企業様にご利用いただいています。
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YOYO Holdings Pte. Ltd.
Co-founder&CEO
深田 洋輔氏
従業員数/25名 設立/2012年
事業内容/新興国向けにモバイル通信料金を無料化するサービス「PopSlide」の開発・運営。