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大阪の魅力溢れる「SEKAI HOTEL」で体感する“街全体がホテル”の旅

2023.08.03

お風呂は街の銭湯、夕食の会場は商店街の飲食店という一風変わったホテルがある。東大阪市・布施と富山県高岡市で事業を展開するSEKAI HOTELだ。

SEKAI HOTELは、街全体を1つのホテルとみなした宿泊施設。商店街の空き店舗や空き家をリノベーションした客室にチェックインした利用者は、「SEKAI PASS(セカイパス)」と呼ばれるタグを首にぶらさげて街へ飛び出す。先に紹介した銭湯や飲食店はSEKAI HOTELのパートナー店舗であり、そこでは、無料のサービスやさまざまな特典を得ることができる。

「ナチュラルな日常に飛び込むことができるのが、私たちのホテルの特色であり魅力です」と話すのは代表の矢野氏。地域にも受け入れられ、「おばちゃんとの会話が楽しかった」「お店の常連さんにおごってもらった」など、宿泊客と地域の人々との交流が生まれているという。

パートナー店舗で、さまざまなサービスや特典を得ることができる「SEKAI PASS」。

現在、利用者は20代の若者から熟年世代までと幅広い。外国人観光客も増加していて、ヨーロッパと台湾からの利用が多いという。矢野氏は、SEKAI HOTELを通して、年齢も性別もハンデキャップの有無も、そして国籍も関係なく誰もが交流する「No Borderな世界」を作りたいと考えている。そこからは、外国人も含めてすべての人にホテルと街を楽しんでもらえるよう、工夫を重ねていこうという姿勢がうかがえる。スタッフは全員が英語を話せるが、これは意図したことではない。SEKAI HOTELの理念や事業内容を学生などに発信していったところ、結果的にグローバル志向のある人材が集まった。

代表取締役 矢野 浩一氏

そして、理念の中核の一つとなっているのが、「街にとって一番いいことをしよう」という考え方だ。「SNSを中心に、地域の魅力やそこで過ごす人の息遣いや感情が伝わるような情報発信を心がけています。そうすると、私たちの考えに共感し、街を大切にしようと思う人が訪れてくれるようになります。そして、地域の人も訪問者を温かく迎えてくれるようになる」。観光客、特に外国人が増えると地域とのトラブルが増加したという話もあるが、SEKAI HOTELではトラブルは皆無と言えるほどのレベルだという。

一見商店街の店舗に見える外観からは想像できないホテルフロント。

オーバーツーリズムという言葉が表すように、行き過ぎた観光客の増加は負の影響をもたらしかねない。まして文化や習慣の異なる外国人を対象にする場合、近隣地域が消耗したり疲弊してしまうリスクは高まる。「私たちがめざすのは地域住民と観光客が共存する観光」という矢野氏の言葉は、待ちわびていた追い風が吹く今だからこそ、しっかりと受け止めたい言葉だと言えるだろう。

【 インバウンド大胆予想 】
この先20年でどの業界も経験したことがないくらいの追い風が、観光業界には吹くと思います。でも、追い風だから成り立つようなビジネスはすぐに飽きられる。追い風が収まるときに向けて、今こそ、しっかりとしたビジネスを確立する必要があります。そういう意味では、これから数年間は正念場だと思います。

(取材・文/松本守永 写真/福永浩二)

SEKAI HOTEL株式会社

代表取締役

矢野 浩一氏

https://www.sekaihotel.jp

事業内容/「まちごとホテル」 SEKAI HOTELの運営