「仕事は何をするかよりも、誰とするか」約100年、人を大切にする家族経営で乗り越えてきた危機
木村石鹸の創業は大正13年。今では珍しくなった「釜焚き製法」を守り、職人技でモノづくりに取り組む老舗メーカーだ。90年の歴史の中で数々の危機に遭遇したが、それを乗り越える原動力となったのが「人を大切にする家族的経営」だった。
―石鹸専業メーカーとしての強みは?
家庭用石鹸から業務用洗剤まで幅広く手掛けています。OEMと自社ブランドが半々くらい。原料である石鹸成分の製造から充填まで、すべて自社で行える生産設備があり、その強みを活かして新製品開発を行っています。自社のオンラインショップで「石けんクリーナー」という商品があるのですが、これは「つくってみたら売れた」商品。手間がかかるので大量にはつくれませんが、思いついたことを実験的に商品化できるのは、当社の強みだと思います。
―今後、力を入れていく分野は?
高付加価値の製品づくりを加速させていきます。2015年の4月に販売開始する自社ブランド「そまり」もその一つ。名前の由来は「素材のかたまり」で、天然由来成分だけでつくったハウスケアアイテムのラインナップです。きれいにする洗剤が空間を汚すことのないよう、シンプルなパッケージにもこだわりました。天然由来成分だけでつくっているから、季節によって中身の色がぜんぜん違ってくるんです。そうした素材感まで楽しんでほしいという思いから、透明の詰め替え用パッケージを採用しました。
―高付加価値商品とはいえ、価格が高いと売りにくいイメージがありますが
何百万本も売る大手と競合するよりも、大手がやりにくいもので勝負していきたいと考えています。売れるか売れないかは正直わかりませんが、うちでつくれる最高の石鹸をめざそう、と。もし売れなかったとしても、開発の経験やデータは無駄にはならない。「会社の新しい歴史をつくっていくための挑戦」と位置付け、全員が意識することができたのは、とても大きな意味がありました。
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