油から飲食業界を変革
原材料・光熱費の値上げ・消費増税など、厳しい環境の飲食業界をサポートするため、躍進しているのが株式会社フォーオール(大阪市西区)だ。
代表取締役の波田成由氏は、以前は換気扇などのフィルターをつくる会社で、家庭向け商品を開発していた。しかし、より使用条件が厳しい業務用に特化したいと独立。8年かけて研究を行い、食用油濾過(ろか)システム「エコレ」を開発した。
食品添加物のみが原料のアレルギー物質を含まない吸着剤を油に入れフィルターで濾過することで、調理後の油に発生する身体に有害な物質(遊離脂肪酸など)が吸着・除去され、劣化した油が回復する。濾過方法を簡単なものとし、導入コストがほとんど掛からないことが大きな特長だ。
導入店にとっては、揚げ物がおいしくヘルシーに揚がるだけでなく、臭い、ベタつきの軽減など店舗内の環境改善、食用油の経費削減、環境への負荷低減といったメリットがある。
しかし販売当初は認知度も低く、すぐに導入には結びつかなかった。飲食店が閉店する明け方まで待機し、デモンストレーションを行ったこともあった。転機は、全国放送の情報番組に取り上げられたこと。問い合わせが増え、売り上げも前年度の約2倍となった。設立5年を迎える今、販売代理店は100社を超え、大手飲食チェーン店にも導入されている。
しかし、ペール缶にフィルターをセットし、熱い油を移して濾過する発売当初の従来品は、女性やアルバイトが多いチェーン店などでは、「手間がかかる」「作業が危ない」「場所を取る」と、導入を敬遠される場合があった。そこで今回、これらの声を解決する新モデルを開発した。フライヤーとの一体型や、濾過容器のみの後付けを可能とし、大手厨房(ちゅうぼう)機器メーカーであるタニコーに生産委託を行った。店舗の初期投資が抑えられる上、導入時の現場調査、取り付け、メンテナンス部分を全国に拠点を持つタニコーが直接担うことで、これまでにないサービスと推進力が期待できる。
「油をリユース(再使用)することで、店舗さま、お客さま、地球環境、みんなに喜んでもらいたい」
波田社長の挑戦は続く。
(大阪産業創造館 プランナー 徳中絵美)
▲女性・アルバイトが多い大型店への導入が期待される食用油濾過システムの新モデル(右)