常識にとらわれず 徹底的にこだわるのは「見た目」
1991年から英国調メンズカジュアルの服を企画・販売していた小澤氏はちょっとしたきっかけでかばんをつくり出した。「重量物を吊り下げるときに使うスリングという工業用ナイロンテープを持ち手部分に使えば、かばんが絵になる」と思ったのだ。8年前「バッグンナウン」のブランドで送り出した商品は、持ち手のヒモが短いのが特長だ。
肩からも掛けられるように取っ手のヒモを調整できるものが多いが、「うちのカバンは持っただけでオシャレに見えるように、最初から長さを決めてある」という。
小澤氏のカバンに対する考え方はいたってシンプル。「かばんは、サイズを選ばないと着られない服と違って、中に入れるものが限定されていない立方体の入れ物。だから自由な発想でつくれるんです」。機能性、実用性を重視したかばんがもてはやされる中、「あくまで見た目にこだわる」のがバッグンナウンらしさだ。
メンズ向けとして商品化したが、ふたを開けてみると購買者の6割は女性。口コミも広がりやすかった。「街で見かけて一目ぼれした」と、フランチャイズ展開を買って出る企業が現れたほか、多くのセレクトショップにも並ぶようになった。
発売開始は、2006年にデパートで期間限定販売。その後、順調に知名度が上がり、現在では国内全10店舗で展開している。引き合いは国内だけにとどまらない。「海外のショップのバイヤーは品ぞろえに注目しているので、日本のセレクトショップに足を運ぶことが多いんです。うちのかばんもショップで彼らの目に留まったのがきっかけで声がかかったんです」。
現在では、販売代行を専門とする海外の業者を通して、ヨーロッパを中心に14カ国50店舗を超えるまでになった。
カラフルなトートバッグはおけいこかばんとして、大きく口の開いた帆布製ショルダーはマザーバッグとして…。いくつもの商品が定番に育った一方で人気が続かなかった商品もある。それは決まって「愛用者にこんなカバンがほしいといわれ、『ご機嫌を伺って』つくった商品」だという。
ブランドを立ち上げて9年目。「かばん屋の常識にとらわれない発想」でこれからも商品開発を進めていこうと考えている。
(取材・文/山口裕史)