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定番商品に時代性を掛け算 新生「柿の種」

2015.02.10

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2011年3月、髙島屋大阪店の増床リニューアルオープンに合わせ和菓子売り場に登場した「かきたねキッチン」。大ぶりの「柿の種」にチーズやキャラメルラテなどのフレーバーをあしらい、透明の計量カップで売る。なじみの米菓に新しい装いをまとわせた戦略は大当たりし、連日午前中で売り切れる大ヒットとなった。

量り売りでは最大3種類のフレーバーをミックスできる。

量り売りでは最大3種類のフレーバーをミックスできる。

創業100年余の歴史を持つあられメーカー。多くを百貨店での贈答用需要に頼り、顧客も高年齢層に偏っていた。新たな需要の開拓をと模索していたときに、髙島屋から増床にあたり和菓子売場を大幅に変えたいので新店をと打診があった。

社内の開発会議では、「好みのあられを詰められる計量販売はどうか」といった声のほかに、親会社である亀田製菓の看板商品「柿の種」を生かした商品化ができないかというアイデアが出されていた。そして「柿の種の量り売り」が、バイヤーの下した判断だった。

店頭には3~7基の計量ディスペンサーを設置、フレーバーの種類によって選べる楽しさを演出した。

店頭には3~7基の計量ディスペンサーを設置、フレーバーの種類によって選べる楽しさを演出した。

これまで「柿の種」はどちらかというと男性のおやつだったが、若い女性が自分用にカジュアルに食べられる米菓、をコンセプトにこれまでと真逆の商品開発がスタートした。

たまたま工場に残っていた、通常の柿の種の3倍の大きさの金型で試作をした。できあがってみるとお米の味をしっかり感じられるうえに、付け爪をしている女性でもつまみやすいことがわかった。

付け爪をしている女性でもつまんで食べやすい長さ約40ミリのビッグサイズ。

付け爪をしている女性でもつまんで食べやすい長さ約40ミリのビッグサイズ。

百貨店では商品力だけでなく、売り方も問われる。いくつもの透明容器に入った計量ディスペンサーを置き、ぎっしり詰まった「かきたね」が見えるよう演出した。最後まで難航したのは価格設定。バイヤーの判断で計量カップ(約80g )で270円に決まったが、生産コストを考えると厳しい条件だった。

「値段を上げてほしい、できないならカップを小さくしてほしいと交渉しては、『それならやめるか』と返されるという連続だった。でも結果的には、この価格だったから売れた」と豊洲氏は振り返る。オープン当日、長蛇の行列を見て、感動して涙が出てきたのを今でも思い出すという。

工場での味付けの工程。

工場での味付けの工程。

スタートダッシュを決めた「かきたねキッチン」は他の百貨店、駅ナカ商業施設からも引き合いの声がかかり全国14店舗に広がった。「バイヤーの強力な推進力のおかげでぼんやり考えていたことが結実した。すでに一般的になじみのある柿の種をベースにしたからこそ受け入れられたのだと思う」と語る。

「かきたねキッチンをきっかけに従来弱かった首都圏のあられ市場に入りこむチャンスも増えた」と豊洲氏。大阪のあられ文化を全国にじわじわ浸透させていく狙いだ。

広報部  部長 豊洲牧子氏

広報部  部長 豊洲牧子氏

(取材・文/山口裕史)

とよす株式会社

広報部 部長

豊洲 牧子 氏

http://www.toyosu.co.jp/kakitanekitchen/