【ビジネスチャンス倍増プロジェクト】商談で学んだ気づきを自社のものづくりに活かす
ナビゲーターが2012 年9月に向高工業を訪問。その後、工具メーカーA社の紹介を受け、面談。同社の副工場長を紹介され、カッターの加工を受注した。
結局、精度の要求に応えられず、協力会社に製造を委託したが、その過程で得られた学びは大きかった。
ペンチやドライバーなど工具を加工するためのカッターを製造する向高工業。カッターを加工するにはグラインダー(研削盤)やバイト(切削工具)を巧みに操る熟練の技が必要で国内には同業者が6社しかない。
向高氏はマッチングナビゲーターに工具メーカーの紹介を頼んでいたところ、紹介されたのが大手工具メーカーA社。「我々レベルではとても近づけない大手企業をいきなり紹介いただき驚きました」と話す。
本社を訪ねるとさっそく鳥取にある工場の副工場長につないでもらい、すぐに注文につながった。だが、要求される精度が高く、製造期間も想定の2倍近くを要した。結局求められた精度をクリアすることはできなかった。
その際、「当初の値段よりは安くなるが買い商談で学んだ気づきを自社のものづくりに活かす上げる」と言われたが、向高氏は「約束の品ができなかったのに代金をいただくわけにはいかない」と断った。その後、他の製品の注文があったときは協力会社に加工を委託することで納品にこぎつけた。
「自社の注文は取れなかったが、より難しい加工をより安く仕入れようと努力する姿勢を学べた」と向高氏。「注文の出し方一つとっても、大手メーカーでは長い納期のものであれば一定期間ごとに製造が滞りなく進んでいるか連絡が入り、納期が守られる仕組みになっている。うちでも真似てみようと思った」。
A社との信頼関係は構築できている。向高氏は近く、コスト面で自信を持っている他の製品について提案するために再び工場を訪ねようと考えている。
(取材・文/山口裕史)
向高工業株式会社
代表取締役
向高 輝夫氏
従業員/8名 設立/1951年
事業内容/ペンチやニッパー、ドライバーなどの工具を切削加工するカッターの製造を専門に行う。タンガロイなど超硬金属を使った切削工具も手がける。工具メーカーのほか自動車関連メーカーと取引がある。