融資枠を使うことなく設備投資を実現する方法とは
2021年10月の新工場移転・拡張に合わせ、工作機械や付帯設備の投資を積極的に行ってきた株式会社マスタニテック。その際に活用したのが小規模企業者等設備貸与制度(以下、設備貸与制度)。この制度を使えば融資を受けなくても同等の効果が得られるとのことで、今回はこの制度を活用した事例を取材しました。
3年前に新設されたばかりの新事業所の外観はガラス張りで、およそ金属加工会社とは想像のつかないオシャレなつくりだ。工場には最新の工作機械が整然と並び、事務所フロアはゆったりとしたスペースが設けられ、バーベキューを楽しめる中庭もある。
「以前の工場は非常に窮屈なスペースだったのですが、社員が快適に働ける環境を整えることはもちろんのこと、地域の子どもたちが会社見学できる場所にしたいという長年の思いを実現させることができました」と6月に3代目社長に就任したばかりの桝谷彰司氏。
今でこそ順風満帆に事業を伸ばしている同社だが、2008年のリーマン・ショック後は売上が3分の1にまで落ち込んだ。起死回生を図るべく、2次下請けからの脱却をめざし、展示会に出展し積極的に技術を売り込んだ。その際に強みとなったのが品質の高さだ。
「工場が狭くて工作機械に投資できない分、検査機に投資したことで精度の高いモノづくりが実現できていました」と語るのは会長の博司氏。それからは口コミで評判を広げ、今や大手メーカーとの直接取引が9割を占め、しかも機械の心臓部に使われる高精度な部品作りを任されている。
新工場への移転に合わせ、事業再構築補助金などを活用して一気に工作機械への投資を増やした。併せて部品についた油脂分などの汚れを取り除く全自動4槽洗浄機をはじめ、付加価値を高める機械類も導入した。その際に活用したのが設備貸与制度だ。「工作機械への投資は金融機関からの借り入れで賄いましたが、運転資金用に融資枠を残しておきたいと考え、設備貸与制度を活用することにしました」と語る。割賦を利用しているが「借り入れよりも低利であることもメリットの一つ」と話す。「付帯設備が導入できたおかげで取引先での不良が減ったと喜んでいただいています」と博司氏。
工作機械の数は移転前の8台から15台に増え、従業員数も8人から16人へと倍増。平均年齢も28歳と若返った。
彰司氏は「新たな工作機械でより難しい加工を習得することで現場のモチベーションも上がる。今後は自社ブランド製品も手掛けてみたい」とさらなる発展をめざしている。
(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)
マスタニテックが利用した「設備投資支援/小規模企業者等設備貸与制度」とは
小規模企業者等の創業や経営の革新に必要な機械設備を、大阪産業局が購入し長期かつ低利の割賦販売(分割払い)またはリースで提供する公的な制度です。例えば、新工場を建てる場合、土地・建物だけで信用保証協会の保証枠や金融機関の借入枠を使い切ってしまった時などに、それらとは別枠で使える設備貸与制度の活用が有効です。担保は不要で、同一年度内で、設備価格の合計金額が1億円の範囲内で、何回でもご利用いただくことができ、合計で2億円の貸与枠があります。詳しくはコチラ⇒https://www.obda.or.jp/jigyo/equipment.html