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[対談]大切なのは、実現可能な事業計画と事業に対する思い(mauka×日本政策金融公庫)

2024.10.08

2017年、美容室を創業するにあたって1,200万円の融資を受けた三瀬氏。日本政策金融公庫 大阪創業支援センター所長の髙上氏との対談を通じて金融機関からの融資を実現させるための事業計画のポイントなどをお聞きしました。

― 創業の経緯について教えてください。

三瀬:東大阪の美容室で10年ほど働いていたのですが、残業時間が長く休みも取れず、スタッフが長続きしない状況が続いていました。スタッフが心身ともに余裕を持って働ける環境を整えてこそ、お客さまにもより良いサービスができると考え、そのためには自分でお店を持つしかない、と独立を決めました。その後、3年間フリーランスで美容師の仕事を続けながら、その間に起業の準備を進めていきました。

髙上:起業の準備は具体的にどのように進めていったのでしょうか。

三瀬:創業に必要な資金を毎月一定額貯めるようにしました。また、知人に勧められて大阪産業創造館の「融資が必要な人のための事業計画作成講座」に通いました。日本政策金融公庫の融資担当の方などのアドバイスが得られる実践的な講座で、融資を受けるためのノウハウをそこで学ぶことができればと考えました。

mauca(マウカ) 代表 三瀬 耕平氏

― 受講してみていかがでしたか。

三瀬:お店はこんな内装にして、スタッフはだれにお願いして、ということは考えていたのですが、指導を受けながら事業計画に落とし込むことによって、毎月どれだけの売上が見込め、経費がどれほどかかるのか、創業時に実際にどれくらいの資金が必要なのかが明確になりました。

髙上:創業融資の審査において金融機関の担当者は、創業される方のお店がまだできておらず、売上実績もない状況で、融資が可能かどうかを判断しています。実現可能性が見込める事業計画か、また創業者がその計画を実際に実行できる方なのかに着目していますので、まずは頭の中で考えている事業の内容が明確に伝わるように具体的に事業計画に落とし込んでいただくことが大切です。事業計画書を作成する過程でご自身に足りないところも見えてきて、創業準備がより万全になっていくことも期待できます。

三瀬:私の場合、店の告知をどうするか考えていなかったのですが、いざ数字に落とし込んでみると、収益を確保するためにはやはり検索・予約サイトの力を借りないといけないと考えるようになりました。融資を受けるまでにどのようなプロセスを経るのかについても全く無知だったのですが、実際に融資を担当される方からご指導いただくことができ、その方と一緒になって、事業計画を考えていくことができ心強かったです。

髙上:事業計画書では、売上・経費・利益に関する収支計画も策定していただきます。どのようなお客さまをターゲットにしているか、店舗の立地やご勤務時代の実績・経験なども踏まえながら、売上であれば客単価はどれ位で実際に来客数がどれだけ見込めそうか、経費であれば仕入れや家賃などの諸経費について妥当なものかを確認しています。

日本政策金融公庫 大阪創業支援センター 所長 髙上 勝彦氏

三瀬:フリーで美容師をしている時についてくださるお客さまはそのまま新しいお店にも来ていただけるであろうと考え、そのリストも添付しました。また、採用するスタッフからもヒアリングをし、どれくらいのお客さまが来てくれそうか聞いて数字を加えました。数字については色を付けることなくむしろ慎重に書きました。

髙上:事業計画書はあくまでもご自身の事業を成功に導くために作るものですので、あらかじめ厳しめに予測しておいた方が取るべき対策も見えてきます。また、事業を始める思いも大切です。いざ事業をスタートすればさまざまな困難が待ち受けています。事業を通じてこういうことをしたいという強い思いがあれば、そうした厳しい局面にも耐えて乗り越えることができると考えています。

三瀬:働きやすい環境を実現して、まずはスタッフが笑顔になることによってお客さまにも笑顔になっていただく、という幸せの連鎖のきっかけになれる店にしたいという思いを書き込みました。

― 実際にどれほどの自己資金があって、どれくらいの額の融資を希望されたのでしょうか。

三瀬:自己資金が400万円ほど用意できたので、日本政策金融公庫から600万円、銀行から600万円の合計1,200万円を借りました。銀行からの借り入れの際は、年収証明書や通帳なども提出しました。

髙上:融資審査では、創業者の方に計画性と信用力が備わっているかという点にも着目しています。自己資金の金額や蓄積の過程からその方の計画性を、家賃や公共料金等の諸支払が遅れずに支払われているか等からその方の信用力を評価しています。

― 最後にこれから起業される方たちに融資に関するアドバイスをお願いします。

三瀬:自己資金は計画的に貯めておくべきです。内装費や不動産関連費用などを合わせると300万円の運転資金しか残らず、開業当初はスタッフへの給与などでそのお金がどんどん減っていくのでひやひやしました。ひと月に要する経費の6か月分は手元資金として用意しておくとよいでしょう。当初は経費の額が大きいだけに消費税が乗ってくるかどうかもしっかり事前に確認しておいてください。


(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

 

【金融機関からのアドバイス】
三瀬さんの場合、それまでの経験やご勤務時のお客さまのリストもつけておられ売上見込みの根拠がしっかり示せているほか、過去のコンテストの受賞歴からも確かな技術力があることが伝わってきました。事業計画書を策定していく過程で、ご自身の強みや弱みが整理され、創業後の課題となりそうな部分を把握し、あらかじめ対策しておくことが事業成功に繋がるものと考えています。創業準備を進める中でたくさんの悩みやお困りごとが出てくると思います。そんな時は、大阪産業創造館や日本政策金融公庫を含めた金融機関など、創業を支援する機関へぜひお気軽にご相談ください。
日本政策金融公庫 大阪創業支援センター 所長 髙上 勝彦氏 https://www.jfc.go.jp

マウカ

代表

三瀬 耕平氏

http://mauca-h.com

事業内容/美容業