スタッフ連載

ひと目で魅了された「和菓子」の世界へ飛び込んで19年 ~「美味しい和菓子で、みんなを幸せにしたい」という思いを貫いた起業ストーリー

2024.05.31

大阪産業創造館 創業支援支援チームの【起業プログラム】を実際に利用し起業した“先輩起業家”を紹介する連載コラム。起業を志したキッカケや、困難に直面したとき乗り越えた方法、また事業を軌道に乗せるために必要なことなど。一歩先をいく先輩起業家の体験談を紹介します。

【起業家図鑑】vol.47
ひと目で魅了された「和菓子」の世界へ飛び込んで19年
「美味しい和菓子で、みんなを幸せにしたい」という思いを貫いた起業ストーリー
 

■ なぜ、和菓子だったのか?

高校卒業を控えた中山氏は、進学せずに就職することを決めていた。
学校では「伝統芸能」に関する専門的なことを学んでいたため、日本の伝統に携わる職種に就きたいと思っていたが、「伝統」「職人」というキーワードから思い浮かんだのが「和菓子」だった。
早速、近くの和菓子店に出向き、店内を見学しながら美味しそうな菓子を買って帰り、そのうちのひとつ「どら焼き」を食べたところ、美味しさに感動した。
また、ショーケースに並ぶ季節の「上生菓子」の美しさにも驚き、こんなに美しいものが作れる素晴らしい仕事だと感じ、自ら店に電話して面接をお願いしたが、新卒は採用していないという回答だった。
せっかく見つけた仕事を諦めきれず、嘆願し、面接にこぎつけた。和菓子製造の仕事は力仕事も多く、不安がられたが、空手経験や体力をアピールし、和菓子の世界へ飛び込んだ。

 

■ 和菓子職人としての修行から起業まで

右も左もわからないまま和菓子業界に飛び込んだが、「こんなに楽しい仕事をさせてもらって、お給料までもらえるなんて天職だ!」と思う日々が続いたという。
出勤時間は朝6時。しかし、その時間に出勤してもすでに仕込みが終わった後で、仕上げの作業しか残っていなかった。
「すべての工程作業ができるようになりたい」という思いから、工場長に仕込み作業の始業時間を確認。仕事ではなく修行として学ばせてほしいと直談判し、毎朝4時には出勤することになる。
お米を蒸す仕込み作業から見させてもらい、その後仕上げ作業をこなし、夕方まで働く日々。「周りの友人たちが大学で学んでいる間に、私は技術を手に入れるんだ!」という強い思いを持ち、根性で日々を乗り切った。
当時、「三年間の修行を終えたら、この技術で開業する」という目標を持っていたため、和菓子店で仕事をしながら、菓子メーカーでもパートをするなど、さまざまな形態の「菓子」について学ぶ機会を持っていたが、三年が経過したころ、まだ自分の技術や知識に満足できない自分がいた。そんなとき、妊娠がわかった。
これを機会ととらえ、子どもがいても働きやすい環境を整えるために和菓子メーカーへ転職した。転職によって経営にも携わることができ、仕事の領域を広げることができた。
19歳で和菓子の世界に入り、19年経った今でもまだ修行中だと言えるほど、和菓子の種類は多く、その奥深さを日々感じている。
妊娠中も仕事を続け、産後も一歳半から保育園に預けて復帰した。開業資金を貯めるため、子どもが寝たあとに夜勤に出かけ、その足でまた夜まで仕事をするという日々だった。結果として、休む間もなく働いたことで貯蓄額は目標だった自己資金700万円を達成した。

 

■ 起業に向けて

勤め先を退職し、物件を探し始めたころ、包装材のメーカーの知り合いから、東住吉区にある和菓子店「松屋」が店を継いでくれる人を探しているとの話を受けた。そこで中山氏は、一定期間、「松屋」の来客数や人通り、年齢層、客単価を調査し、数字にまとめた。
自分のビジネスとの採算性を確認した上で、店主の人柄や客層の良さ、72年続く伝統あるお店であることが最終的な決め手となり、伝統を継承しつつこの地で新たな形でスタートすることを決めた。
店主からは「松屋」の看板商品である『かりんとう饅頭』を受け継いだ。経営者は変わっても、「松屋」の形を残しておきたかったからだ。
「松屋」の餡子はとても美味しかった、和菓子職人歴19年の技術を捨て、和菓子の命ともいえる「餡子」の炊き方も一から学びなおし、新たな技術を身につけたことも、ここでやっていくという覚悟だった。

 

■ 起業プログラムの活用

いざ起業に向けて、店舗改装などの計画を進める中、難しいことが山積みだった。自分が持っている知識だけでは限界があると感じ、大阪産業創造館へ相談に訪れた。
そこで「起業サポート『チョイス!』」を薦められ活用することになった。
「起業サポート『チョイス!』」では、起業に関する知識を学べるセミナーへ参加し、一定の条件をクリアすることで、特定創業支援等事業修了の資格を得ることができる。
その資格を活用し、創業後の登録免許税の軽減などの支援を受け、日本政策金融公庫からも満額融資を受け、2,500万円の資金で「菓匠 FUKUROU」を開業した。

 

■ 店舗や商品へのこだわり

素材の見直しにもこだわり、小麦粉は国産のもの、甘味は甜菜糖を使用し、色付けには添加物を使わないようにした。
その当時、実母ががん治療を行っていたこともあり、病と闘う人も安心して食べられる素材を使いたいという思いがあったという。
お店の外観は、若い層のお客さんにも気軽に入ってもらえるように、また、どら焼きも若いターゲット層向けに生クリームを入れて写真映えする商品に仕上げた。和菓子業界では、主要商品が全体の3割程度の売上げがあれば良いとされているが、「菓匠 FUKUROU」では5割を超えており、ターゲットに合わせた商品の企画力が高く評価されている。

 

■ 未来の起業家へのメッセージ

「人生は一回きりなので、起業したいと思ったならば、一度やってみてほしい。やらずに後悔するよりも、やって後悔するほうが良い。知識がなくても、専門家のアドバイスを活用することで、起業準備もスムーズに進むんだよと伝えたいです。
今は、長年の夢だった和菓子店を開業し、夢が叶った喜びを感じながら毎日作業をしています。和菓子を作っているときが一番楽しい時間であり、スタッフにも楽しんで過ごしてもらえるよう、明るい空間を作ることを心がけています。
店の名前やロゴキャラクターには、娘の名前や雰囲気から連想したフクロウを取り入れ、“美味しい和菓子で、みんなを幸せにしたい”という思いを込めています」と、中山氏はスタッフや家族への思いを語ってくれた。

「菓匠 FUKUROU」代表 中山 美奈 氏

アイデアだけでもいい、まずは誰かにそのアイデアについて話してみませんか?
大阪産業創造館では、起業に役立つセミナーやプログラムをご用意しています。

evepage_sogyo_bnr

⇒利用した起業プログラム
起業サポート「チョイス!」
起業準備中・起業直後の方へ
起業準備や起業後の不安、課題解決に悩んでいる方のために、起業サポート「チョイス!」が起業に役立つセミナーや面談などを介して、起業をサポートします。
https://www.sansokan.jp/choice/

 

菓匠FUKUROU

代表

中山 美奈 氏

https://www.instagram.com/kasyou.fukurou/?hl=ja

和菓子の企画製造販売