高校生が意志ある進路選択をできる社会に!実質選択肢の無かった就職活動を改革
【起業家図鑑】大阪産業創造館 創業支援チームのプランナーが月替わりで起業家を紹介する連載コラム。起業を志したキッカケや、困難に直面したとき乗り越えた方法、また事業を軌道に乗せるために必要なことなど。一歩先をいく先輩起業家の体験談をプランナー目線で紹介します。
【起業家図鑑】vol.27 高校生が意志ある進路選択をできる社会に!実質選択肢の無かった就職活動を改革
多くの大学生は、3年生の3月から会社説明会に足を運び始め、自分にあった会社を見つけるために、慣れないビジネスシューズやパンプスを履いて足にまめができるまで何社も訪問するというのが就活のお決まり。
しかし、高校生の就職活動には「1人1社制」の応募を原則とする慣行があるのはご存じだろうか。
しかも学校にある紙の求人票を見て会社を選ぶという昔懐かしい形式。
当然、文字だけではどんな仕事をするのか、職場の雰囲気はわからないため、仕事選びを先生任せにしてしまうという現実がある。
高校生のキャリアコンサルタント事業を展開している株式会社アッテミーの代表の吉田氏は、高校卒業後の進路を自分の意志で選択できないことに不満を抱いた一人である。
当時、進学に力を入れている高校に入学していたため、「どうして学校では、有名大学へ行き大手企業に入るという進路指導しかしてくれないんだろう」「社会で活躍するには高校・大学の7年間を経ないといけないのか」と、先生から言われるがままの自分に悩んだという。
大学卒業後、楽天株式会社に入社。これからのインターネットの時代、生き方・働き方は多様になるとネットショップオーナーと関わっていく中で実感し、「偏差値にあてはめるだけの高校の進路指導を変えたい!」と楽天を退職。
大阪の公立高校で進路指導を常勤で行う求人情報を見つけ、スーツケース1つ抱えて縁もゆかりもなかった大阪に飛び込んだ。そこで目の当たりにしたのが、高校就活の実態だった。
7年間、公立高校内で就職指導を続け、高卒就職には大きく2つの課題があることが見えてきた。
[1]高校生に仕事を選ぶ知識・経験が備わっていないこと
[2]「1人1社制」のため、複数の会社に就職面接を受けて決めることができないこと
これらを解決するには学校の先生や自治体だけでは難しいのが現状。
「ないなら作るしかない!」と、個人事業主としての活動期間を経て、多くの方のサポートもあり2019年5月に株式会社アッテミーを設立した。
課題を解決するため、高校生、企業、学校の3つの側面からの事業を展開。
まず、高校生に職場体験ができる仕組みを提供する。これにより、実際に働く時の業務内容や会社の雰囲気を知るだけではなく、やりたい仕事が見つかったり、大学に行って専門知識を身につけるという選択の視野を広げる機会を提供している。
そして、企業には高校生採用のアドバイス、学校には就職指導ができる専門人材(スクール・キャリアコンサルタント)の育成を、同時展開しながら課題を解決している。
実際、高校生を採用した企業からは、「素直な高校生は成長のスピードが速い」「高校生が入社することで、これからの時代に求められる多様性のある組織づくりにつながる」」といった声をいただいている。
さらに、この現状を多くの人に知ってもらたいと、さまざまなビジネスプランコンテストにも挑戦。
そして、中小企業庁主催の「Japan Challenge Gate 2020 ~全国ビジネスプランコンテスト~」にて経済産業大臣賞を受賞。
また同時期に、文部科学省と厚生労働省が、高卒採用を巡って「1人1社」の応募を原則とする慣行の見直しに関する報告書をまとめるなど、高卒採用のあり方について世の中も動き始めた。
現在、吉田氏は二人の子育てをしながら、社会変革をめざして事業に取り組んでいる。
自身の体験と子どもの将来を見据えながら、「高校生が意志ある進路選択をできる社会にしたい」と意気込む。
(取材・文/大阪産業創造館 創業支援チーム プランナー 松原美華)