妻・同僚・経営者と3つの顔を持つ心強い人生の相棒
大阪産業創造館プランナー 中尾 碧がお届けする【聴きたい!社長の相棒】
社長だって一人の人間、しんどい時もあります。そんな時にモチベーションの支えとなり、「一緒に頑張っていこな!」と声をかけたい“人”または“モノ”がきっとあるはずです。当コラムでは社長のそんな“相棒”にクローズアップ。普段はなかなか言葉にできない相棒に対するエピソードや想いをお伺いしました。
【 vol.4 】株式会社ライフケア~妻・同僚・経営者と3つの顔を持つ心強い人生の相棒
株式会社ライフケアは、大阪市内でデイサービス施設を2か所、整骨院を1か所運営し、今春からは訪問介護事業(訪問鍼灸・あんまマッサージ)も開始した。
同社は2003年に一谷氏が整骨院として開業。創業当初、まずはすぐそこにある売上を上げるために、従業員に対してさまざまな制度を作ったが、一谷氏の「体育会系」経営に合わず従業員が離れてしまった。
その反省から経営者としてのあるべき姿を学ぶため、多くの研修を受けて勉強を続けた。今では「まず従業員各世代が何に価値を置いているのかを知る。」と考えるに至り、2011年に現在の株式会社ライフケアを設立した。
従業員の技術・内面の向上にも積極的に取り組んできたが、彼らが自主的に動けるようになったと感じたのは今から3年前だ。その少し前に事業拡大に伴い、創業以来初めて大きな借入をした。金融機関との契約後に見た外の建物が、一瞬おもちゃのように見えたくらい世界が変わった。
「これからは自分ひとりが頑張るだけではなく、全社一丸となって本気で仕事をしていかないといけない」。そこから経営に対しての意識が変わった。本気度を伝えるために従業員と話し合い、覚悟をし合った。その時一緒に泣いたメンバーは、現在立派な幹部社員へと育っている。
経営者として転換期を何度か迎えた一谷氏のそばで、ずっと「相棒」として支え続けたのは妻の李氏である。李氏自身も社会福祉主事の資格を有し、同社のバックオフィス部分を担当する。実は李氏、自らも語学教室を運営する経営者であり、大学でも教鞭をとる。
家庭での会話は、経営者としてお互いの仕事についての話題がほとんど。一谷氏が李氏に仕事上の悩みを相談すると、経営者の視点から非常にロジカルな助言が返ってくる。
また、一谷氏は年間50回程度の講演を行っているが、講演で使う資料も李氏によるチェックが欠かせない。多忙の中、添削したプレゼン資料とともに、大量の関連資料もつけて返してくれたこともあった。
ともに会社で働く相棒でもあるが、時には名参謀でもある。
経営に関わる研鑽や数々の執筆に力を入れている一谷氏。しかし李氏との出会いが無ければ、現在のように論文を読んだり、執筆したりすることは無かったというくらい、李氏の存在は一谷氏の経営に対する取り組み姿勢を変えた。李氏を経営者としても深く尊敬しており、李氏もまた、一谷氏の真っすぐな姿勢を尊敬している。
要介護者の増加と人手不足。介護業界ではICT化など仕事の効率化が課題だ。業界のICT化先駆者として講演で日本全国を飛び回り、そして自社の経営も行う一谷氏。介護現場のより良い明日をめざしたい、そのバイタリティーを支えるのは、妻・同僚・経営者と3つの顔を持つ心強い人生の相棒だった。
(取材・文/大阪産業創造館マネジメント支援チーム プランナー 中尾 碧)