金属加工技術を生かし、医療の近接業界を開拓
病院の診察室や調剤薬局の調剤室などで使われるステンレス、スチール製の保管庫や運搬用ワゴンなどの製造を手掛け、設計から製造、組み立てまでをすべて一貫して行っている。
医療や調剤の現場で求められるのは軽量でありながら頑丈かつ安全なこと。製品の多くは薄い板を曲げてから溶接をしていくが、特に溶接工程ではレーザー、放電、抵抗、ガスなどの方法を素材やコストに応じ使い分けている。溶接では金属同士がしっかりとくっつくように集中的に熱を当てるが、熱をかけすぎると金属が傷むためその加減が腕の見せどころだ。
仕上げでは丁寧にバリ取り(加工する際に生じる突起部やギザギザを取り除くこと)や面取り(鋭利な角部分を平たくしたり丸めたりすること)を行うことにより現場で使う際にけがすることがないようにしている。
1968年の創業時は病院で使う機器類の修理からスタートしたが、次第に完成品の製造も任されるようになった。病院だけでなく調剤薬局向けに仕事が広がったことが飛躍のきっかけになったという。
病院や調剤薬局にルートを持つ商社向けのOEMが100%を占めるが、そこで大切にしているのが「得意先のかゆいところに手が届くこと」。例えば出荷の見込みがありそうな製品については在庫を多めに持ち、発注があった際には病院や調剤薬局に直接すぐに納品できるようにしていることもその一例だ。
そうした信頼関係から「米澤さんの事業の発展につながるなら」と得意先から声をかけられることも多い。その中の1社から「ベトナムに工場を作るので現地で部品を供給してほしい」と相談があり3年前にベトナムに工場を開設。「低コストで製造できるメリットを生かし、今後は発注量の多い製品をベトナムで造っていきたい」と米澤氏。
また、別の得意先は、ステンレス製医療器械のオーダーメードを受注するECサイトを開設してくれた。そのサイトを通じて動物病院から注文を受けたことをきっかけに現在、病院、調剤薬局に次ぐ新たなターゲットとして動物病院を開拓しようとしている。「病院、調剤薬局向けに作ってきたもので転用できるものがある。当社のノウハウで現場のニーズに合った新たな製品を開発することでも役立ちたい」と話す。提案力を増やすため、樹脂など異素材との組み合わせも新たに検討している。
(取材・文/山口裕史)
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