入門者に特化、サイクリングを日本の文化に
「自転車は持っていないけれどサイクリングをしてみたい」「ロードバイクは高価で簡単に買えないし、いきなり車道に出るのは怖そう」。クロスビープランニングはそんな疑問や不安を抱く入門者に特化した「サイクリング屋」だ。
午前中だけ走る「3時間コース」、お昼をはさんで走る「6~7時間コース」、そしてだれもが一度は走ってみたい「しまなみ海道コース」の3コースを柱に、手ぶらで参加できるレンタサイクル付きガイドツアーを実施している。
大切にしていることの一つは「怖くないようにすること」。走行前の講習では、まずブレーキをかけて自転車を止め、安全に乗り降りできるようになるまで指導し、コースは車が少なく、広い道を選ぶようにしている。もう一つは「おいしいこと」。選りすぐりのおいしくて映える店をどのコースにも取り入れている。「景色も楽しんでほしいけれど、初心者はそこまでの余裕がない。おいしい目標があればがんばれるかな、って」と内村氏。
ガイドで先導する際にはバックミラーで後続の参加者を常に確認するようにしている。「しょっちゅう後ろを振り向いていたら、私たち遅いのかなって気にしてしまうでしょ?」と、とことん初心者に寄り添うサービスを極めている。
2輪車の用品メーカーで働きながら趣味でサイクリングを続けていた内村氏は、自転車ショップの営業に転職して痛感した。「サイクリングに興味がある人でも、ショップの敷居が高すぎて足を踏み入れられない」と。そして「サイクリングのすそ野を広げるにはモノ(自転車)よりコト(乗る楽しみ)を売らなければ」と2018年夏に起業した。
コロナ禍で、外に出て体を動かしたいという人が増え、顧客の年齢層もこれまでの30~40代の女性中心から老若男女問わず広がっており、サイクリングを楽しみたい人が増えているのを実感している。
屋号のXBには「何かとバイクを×(かける)」という意味が込められている。橋上からの眺望、歴史散策、工場めぐりなど、クルマがとめられない、入り込めない場所や、徒歩ではとても周り切れない範囲のマイクロツーリズムと手軽な移動手段である自転車の相性は抜群。
今後はレンタサイクルを活用しきれていない自治体や、従業員への福利厚生を充実させたい企業への提案、親子サイクリングも強化していくという。「スキーやボウリングのようにだれでも手軽にできるレジャーにし、サイクリングを文化に」と熱い思いをほとばしらせている。
(取材・文/山口裕史)