レスポンス命!ラジコンの操作速度を徹底追求する超コダワリ企業
さて、次に見せていただいたのが売れ筋の自動車用プロポ(ホイーラータイプ)です。
なんと液晶画面がついているではありませんか。まるで「玩具」でなく業務用の制御盤のような重厚感。画面にはステアリングの切れ角やスロットルの開度、ブレーキングの強さなど、さまざまなインジケータが並んでいます。なんか興奮してきたな。
大野さんいわく「ラジコン競技では手が砂や泥で汚れていることも多いので、タッチパネルのものよりボタンで操作することにこだわっています。0.1秒を争う操作をすることもあるんですよ」。
そういえば大野さん、世界選手権にも出たことがあるプロでした。本物の選手からの生の声が開発に活かされているんですね。
30年くらい前のモデルでは当時として先進的なタッチパネルのものもあったものの、ザラザラに劣化してしまうので廃止、ボタンなどで操作する今の形に辿り着いたと言います。そういった細かい操作のしやすさや、多様な調整幅が自社製品の付加価値となっているんですね。
では開発に一番力を入れているところは?と聞いてみると、「機器のレスポンス」だと言います。
ラジコンも通信方式が27MHzや40MHz(懐かしい!)から、2.4GHz帯のデジタル通信になり通信速度や容量が飛躍的に向上し、動作レスポンスも抜群に改善されました。
かつては、送信した信号をラジコンが正確に受信できたかわからないレベルでしたが、2.4GHzになりびっくりするくらい性能が向上したとのことです。
開発に際して常に念頭に置いているのは、プロポ(送信器)の中のデータ処理を早くすること。そして、リアルタイムに近い状態で電波を送信し、次に受信機が電波を受けてからサーボにデータが到達するまでの速度改善。
最後にサーボがそのデータを受けてから作動するまでの時間の改善。つまりはプロポ・受信機・サーボが三位一体となって早く動くように開発することで、結果としてラジコン自体を非常に俊敏に反応させることができるようになったと言います。
※サーボとは操作通りに動いて小さくても力持ちなスグレモノ、自動制御装置。
「カーブの前でハンドルを切るといった操作をギリギリまで遅らせることができるようになりました。しかし、そこでより上の通信速度をめざすことで、逆に反応が良くなりすぎ、一般のお客様でも違いがわかる方が少なくなってしまったのが残念」と大野さん。
冗談はさておき、今後も三和電子機器株式会社は反応速度を突き詰めていくのか伺ってみました。すると、これからは「緻密に動かすこと」を狙っていくとのこと。
「今まではラジコンを早く動かすことを重視していたので、動かす「量」の正確さについてはまだ課題でした。レスポンスについては行きつくところまで行ってしまったので、これからは細かく緻密に動かすことをめざしていきたい」と大野さんは語ってくれました。
その言葉には「単なるおもちゃの車」なんかではなく、競技に使用する精密な器具を設計開発する企業のアツい思いが込められていました。
(取材・文/大阪産業創造館ものづくり支援チーム プランナー 江口幸太)