ものづくり

ものづくりでの社会貢献をめざす社長を牽引する相棒

2020.11.19

大阪産業創造館プランナー 中尾 碧がお届けする

社長だって一人の人間、しんどい時もあります。そんな時にモチベーションの支えとなり、「一緒に頑張っていこな!」と声をかけたい“人”または“モノ”がきっとあるはずです。当コラムでは社長のそんな“相棒”にクローズアップ。普段はなかなか言葉にできない相棒に対するエピソードや想いをお伺いしました。
 

【 vol.13 】サントー試作モデル株式会社 ~ものづくりでの社会貢献をめざす社長を牽引する相棒~

 
サントー試作モデル株式会社は樹脂を主体とした各種部品の試作を行っている。

オンライン展示会をはじめ、最近はMOBIOのYouTubeライブ配信にも出演した社長の基実氏であるが、実は少し前までこういった露出に気が進まなかった。そんな基実氏の意識を大きく変えたのが、“相棒”である妻の枝未氏だ。

元々ものづくりが大好きで、幼い頃も工場で端材を使って遊んでいた基実氏は、21歳の時に父が営む同社に入社した。早くからマシニングセンターに携わり、数々の制作物を手掛けてきた。その間、枝未氏と結婚し、「自分も父のような職人になりたい」と実直に技術を高め、難しい案件にも対応してきた。

 
しかし当時の「安く・早く作る」に重きを置いた社風や試作制作という業態柄、得意先の状況に左右されて受注が安定しないことが長年の経営課題だった。枝未氏にも基実氏の悩みはよく伝わっていた。

かねてより自社HP・SNSで積極的に情報発信し、大阪市内、東大阪市内の製造業と関係を温めてきた枝未氏。
同社の営業姿勢を変えるためには、情報発信や他社との交流が必要であることを身に染みて感じており、悩む基実氏に枝未氏が「ウチも展示会に出展しよう!」と声を掛けた。今まで、展示会への出展経験は無く、人前に出た経験もほとんど無いため躊躇していた基実氏だが、枝未氏の熱意に押されて出展を決めた。

初めての展示会はさまざまな人との繋がりができ、基実氏に「受け身ではなく、自分からお客様に提案しながら、ものづくりをしていきたい」という気づきを与えた。他社と交流することの面白さも知った。この出展を皮切りに、基実氏のイベント出演や他社との交流への参加が増えた。

 
2020年春先のコロナ禍では同社も影響を受けたが、「こんな時だからこそ社会に貢献したい」と2人を奮い立たせたのは、枝未氏が今まで縁を繋いできた人や企業からの声だった。

6月初頭にはフェイスシールドを自社企画・製作し、医療機関に寄付した。医療現場の要望に対して柔軟に提案・改善を重ねた結果、使い勝手が良く、丈夫なフェイスシールドが出来上がり、最前線で治療にあたる医療従事者達から高い評価を得た。医療従事者達から届いた感謝の言葉は、「社会に必要とされる会社でありたい」という基実氏の想いを強くさせた。

現在もイベント出演や新製品開発に取り組んでいるが、イベントへの参加や新しいアイデアは引き続き枝未氏が積極的に提案し、基実氏を引っ張る。しかし昔と異なり、今は基実氏自身も心からものづくりや他社との交流を楽しんでいるという。

「ものづくりで世の中の困りごとを解決する」という目標を掲げ、これからも2人は力を合わせて進んでいく。

 

代表 基実氏(右)と枝未氏(左)

(取材・文/大阪産業創造館マネジメント支援チーム プランナー 中尾 碧)

サントー試作モデル株式会社

代表取締役社長 山東 基実氏
山東 枝未氏

http://www.santo-shisaku.jp/

事業内容/各種部品の試作