環境負荷の低い和紙糸で、繊維産業の復権をめざす

「ぼく自身はファッションに興味がなくて、クルマをつくるのと同じ感覚で服をつくっています」。最近はずっとその格好だという金沢氏の姿が雄弁にその言葉を物語っている。

中国産と比べコスト、品質の両面で凌駕する国産ニットを年間90万枚、企画、生産し、国産横編みニットではナンバーワンの生産量を誇る。

そのビジネスモデルは「自らデザインした製品を、大量に、早く、安くつくってこれを売り切る」供給視点に立った手法。流行の情報をいち早く取り入れて生産する需要視点に立ったアパレル業界のものづくりとは真逆の発想だ。

最も重要な「安く」を実現するための武器となるのが徹底した原価管理。売上原価の3分の1を占める原材料費を抑え、専門家の内弟子として20年間ありとあらゆる業種の工場を訪ね、培ったラインの配置や最適なシフトなど生産効率向上のノウハウを製造現場で生かす。

セーター閑散期の夏場は別注品を製造し1年を通して生産量を平準化することにも腐心した。安ければおのずと買い手はつく。そのようにして大量生産が可能になり、さらに安く生産できる循環を築いている。

そんな金沢氏が10年前、ある業者が手掛ける「和紙の糸」に出会った。正確には輸入したカナダ産スギのパルプを日本で漉(す)き、撚(よ)って糸にしたものだ。

和紙糸は綿糸に比べ3割ほど軽く、毛羽立たない。抗菌防臭、消臭、温度調節機能にも優れる。当初は太い糸しかつくれず、値段も高かったが、ニットで培ったノウハウをつぎ込んで品質、コストを改善し、生産量を増やしてきた。
さらに和紙糸は環境、労働面で綿糸に比べはるかに優位性がある。スギを伐採した後に植林するスギの若木がCO₂の吸収に貢献するからだ。

金沢氏の試算では、スギ植林のCO₂吸収量と、和紙糸製造で排出するCO₂は相殺できるためカーボンオフセットが可能だという。加えて労働集約産業の綿糸製造は安い労賃を求め、産地に厳しい労働条件を強いてきたことが社会問題にもなっている。

「今後代替品として和紙糸への関心はますます高まってくる」と確信しており、大手衣料メーカーとの商談も始まっている。

金沢氏は2年前に社長職を譲り、現在はニット製品の生産に欠かせない編柄を作成するニットプログラマーの養成学校をフィリピンにつくるべく奔走している。

「編み図を書ける職人は圧倒的に不足している。これを育てることがニット産業を守る道につながる」と金沢氏。50年前に隆盛を極めた日本の糸へん産業復活に向け視界は良好だ。

相談役(創業者) 金沢克哉氏

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

2021年08月02日
株式会社アイソトープ
相談役(創業者)  
金沢 克哉氏
事業内容/ニット製品の企画・製造

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