《講演録》大阪発のバッグメーカー「マスターピース」のブランドを支えるものづくりの現場&人材の強みとは?
◉メイドインジャパンにこだわる理由
古家:現在私たちはすべての製品を国内の自社工場で生産しています。世の中に「マスターピースのクオリティーこそ、メイドインジャパンの代表格」と広く認知されることが私たちの目標です。
メイドインジャパンにこだわる根底には、設立当初、まだまだ私たちのブランドが小さく、商品の発注数もかなり少ないときに助けていただいたのが日本の町工場だった点にあります。職人さんたちが生み出すさまざまなモノと高い技術力に触れ、同時に、技の継承という日本の工場が直面する数々の問題を知りました。
自社工場を設立した背景にも、そうした問題にブランドとして何か貢献できればという思いがありました。ブランド設立当初に助けていただいた感謝の気持ち、恩返しという思いがメイドインジャパンにこだわる理由でもあります。
ただ一方で、次の動きを見据えたとき、メイドインジャパンという概念だけにとらわれるのではなく、私たちの品質が世界標準になっていくような「マスターピース・クオリティー」を世界中に伝えていきたい。そのためにさらに一層自分たちの技術を追及していきたいと考えています。
◉大阪でバッグをつくる強み
桂:私はマスターピースのサンプルラボマネージャーとして試作品の製作などに携わっています。ブランドの黎明期には、一度に生産できる数にも限りがあり、近隣のバッグ工場の職人さんたちに力になっていただいたのですが、当時からバッグ作りの後継者不足は深刻な問題でした。
一般にはあまり知られていませんが大阪はバッグの製造が盛んな地域です。優秀な職人さんも数多くいます。マスターピースの生産を通して日本のものづくりを継承する取り組みを進めたい。
そうした観点から、2008年にマスターピースの自社ファクトリーである「BASE OSAKA」を設立しました。さらに、より多くの職人を育てることのできる環境を整えること、国内のみならず海外にもより多く製品を展開できる生産力を持つこと。それらを目的に、ブランド誕生から25年という節目を機に、2019年には自社ファクトリーを移転・拡大しました。
新ファクトリーに移転後、大幅に増床したことでこれまで3フロアに分かれていたラインとサンプルルームを1フロアに集約させ、職場環境も大幅に向上させることができました。こうしたことでブランドの強みも増しており、サンプルの作成から生産、検品、出荷にいたるすべての工程を自社ファクトリーで完結することによって、最も大切な品質の維持に加えて納期の調整なども非常にスムーズになりました。
自社工場は、言い換えれば職人を自社のスタッフとして抱えるということです。だからこそ、一人ひとりにブランドに対する愛情とプライドが生まれる。全スタッフがより良い商品を提供するという共通目標を持てています。企画に関してもデザイナーとの打ち合わせ段階から職人が積極的に意見交換しているところは、他社にはない強みだと思います。
加えて、ショップのスタッフさんたちも折に触れて生産現場を見学しています。作り手の顔が分かって販売するのとそうではないのとでは、やはりサービスの現場でも違いが出るはずです。会社全体でブランドの魅力を伝えていることが、私たちのプライドにもつながっています。
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