ものづくり

《講演録》「よなよなエール流、差別化戦略!」赤字続きの創業期を乗り越え、熱狂的ファンを増やし続ける理由とは!?

2020.01.26


《講演録》2019年12月7日(土)開催
【起業 STEP UPフェスタ 2019
~とにかく動いてみたもの勝ち!ここからはじまる起業DAY】
「よなよなエール流、差別化戦略!」
赤字続きの創業期を乗り越え、熱狂的ファンを増やし続ける理由とは!?

井手 直行氏(株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長)

長野県軽井沢町に本社を置く株式会社ヤッホーブルーイングは、全国に400社近くあるクラフトビールメーカーの中でトップシェアを誇る新進気鋭のビールメーカー。「ビールに味を!人生に幸せを!」をミッションに、斬新なコンセプトやネーミングの製品を生み出している同社の井手氏が「差別化戦略」について語った。

 
☞ 地ビールブーム終焉で経験した「どん底」

看板製品である「よなよなエール」は1997年に生まれて、今年で23年目になります。ビール業界で20年以上生き残っている製品というのは、大手を含めても決して多くはありません。

製品のコンセプトは「家庭で飲める手頃な本格エールビール」。ブランドキャラクターは「知的な変わり者」と設定しています。私はこの「知的」という部分が大切だと思っていて、その要素が単なる変わり者ではない、デザインの斬新さや個性的な味わいまで含めた製品のブランディングの核になっていると思っています。

創業直後は売上げも非常に順調で、当時の「地ビールブーム」に乗って、営業の必要さえないほどでした。しかしその後、ブームが終わるとともに売上げも急降下していきました。長野県内の酒屋さんを回っても「地ビールブームは終わった」「もう売れない」と言われ、門前払いされる状況が続きました。

そこで、キャンペーンを打ちました。物よりは現金がいいだろうと考え、製品名にちなんで「4747円が47人に1人当たる」と、大々的にキャンペーンを展開しました。営業先の反応もよかったのですが、キャンペーンが始まっても一向に応募ハガキが来ませんでした。目の肥えたお客さまは、そんなことでは商品は買わないんですよね。その時分かったことは、「欲しくないと思われた商品は何をしても売れない」ということです。

倉庫にはビールの在庫が山積みになり、数千ケースが野ざらしになっていました。空き時間に缶を開けては捨てる作業を繰り返し続けて腱鞘炎になったほどでした。

そうしたどん底を経験したとき「モノマネではダメだ」と痛感したのです。大手のやっていることを素人が見様見真似でやっていてはダメ。営業の方法にしても、キャンペーンにしても、大手は優秀な社員が考え抜いている。そうではない自分たちは、全くオリジナルの、独自のことをやらなければなりません。

また、ビジネスのセオリーも当時の私はよく分かっておらず、基本を勉強することの大切さを痛感しました。我流や思いつきでうまくいくわけがないんです。そうして勉強したことを少しずつ実践していくうちに、だんだんと売上げが伸びていき、現在は14年連続で増収増益中です。

創業から8年間は赤字でした。クラフトビールを製造する会社は国内に400社以上ありますが、この20年間でビール業界全体は縮小し続けています。その中でこうした成長を続けているのは、ありがたいことに私たちだけです。

 

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株式会社ヤッホーブルーイング

代表取締役社長

井手 直行氏

https://yohobrewing.com/

事業内容/クラフトビール製造および販売