ものづくり

《講演録》「よなよなエール流、差別化戦略!」赤字続きの創業期を乗り越え、熱狂的ファンを増やし続ける理由とは!?

2020.01.26

 
☞ 実践したトレードオフと活動間のフィット感

ではどのような戦略で差別化をしたのか。著名な経営学者のマイケル・ポーター氏の言をあえて一言でまとめると、戦略とは「競争上必要なトレードオフを伴う一連の活動を選び、一つの戦略的目標に向かって活動間のフィット感を生み出すこと」と言えるのではないかと思います。特にこの「トレードオフ」と「活動間のフィット感」が重要です。何かを取ったら何かを捨てる。また、一つの目標に向かって、ある活動と別の活動がつながっていて互いに相乗効果を生み出していることが大切なのです。

これらがうまく働くことで他社に「マネされにくい」状況を生み出すことができる。これを愚直にやっていこうと心に決め、実際に続けてきました。
 
普通の会社は左右二つの道があれば一旦右に行ってダメなら左に行こうとする、これはトレードオフではないんです。右の道を選んだら左は捨てなければなりません。100人のうち98人が左に進むであろう道を、私たちの場合は右に進む。その先でまた二つに道が別れていれば、もうそこには私たちと同じ道を歩む人はいなくなる。

つまり、難しい決断を2回するだけで、競争相手はいなくなる。ガラパゴス諸島の生き物のように、変な会社が生み出す変な戦略といったところでしょうか。そうした戦略を10年以上取り続けてきました。

 
ブランディングについても、私たちには具体的な製品開発方針があります。その一つが「差別化」なのですが、それは「他社が真似を躊躇するくらい行う」。そして、「ターゲットは狭く、具体的に」。ターゲットが狭いと売上げ規模が少ないから困るのでは?と聞かれることがあるのですが、「私たちの会社は小さいのでこれくらいで十分」だとお答えしています。

たとえば弊社の商品で「水曜日のネコ」という製品があります。6〜7年前に発売したのですが、コアターゲットのペルソナも「30歳前後の女性」「職場ではバリバリ責任ある仕事をこなしている」「独身、もしくは既婚でも子供はいない」「住まいは東横線、日比谷線沿線」といった形で、非常に細かく設定しました。

デザインやネーミングも社内で行い、その際のポイントは「個性的かつ世の中にないものを選ぶ」「賛否両論別れる」「その中で3~5割の人の強い支持があれば凄い」「5割以上だと超凄い」といった点です。以前は、社内でも「そんな製品、市場が求めているのか?」「そんなデザインやネーミングのニーズは聞いたことがない」といった声が上がっていました。

そんなとき私が必ず言うことは「今存在しないものは、消費者は判断できない」ということ。我々は氷山の一角、あるいは水面下にいる消費者を狙って製品化をしていかなければなりません。

 

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株式会社ヤッホーブルーイング

代表取締役社長

井手 直行氏

https://yohobrewing.com/

事業内容/クラフトビール製造および販売