《講演録》「共感」のチカラで、苦境を乗り切れ 〜味方をつくる共感経営とプレゼンの極意~
【第二部】この時代に必要とされる共感経営とプレゼンの極意
◉人の心を動かし、共感を集めるプレゼンとは
自分と反対の価値をもっている人から共感を得ることは難しい。
例えば、犬の従順さが好きな人は、猫のマイペースさが好きな人に共感してもらえません。犬が従順なこと、猫がマイペースなことは誰もが知っていることですが、ロジックで人の心は動かない。
人の心が動くのは共感したときです。犬も猫もどちらも可愛い動物です。犬好きな人は、猫好きの人に対して、「あなたが猫を好きなのと同じくらい私は犬が好き」と言うだけで、簡単に共感は生まれます。
僕には離婚と、部下の半分以上が辞めた経験があります。当時の僕がよく使っていたのは、「あなたが悪い」という言葉。相手を責めるのではなく、「私はつらい」という言葉に変えれば共感を生んでいたはずです。
恥ずかしい失敗をたくさんしたことで、プレゼンするときはいつも共感を意識するようになりました。その結果、プレゼンの天下一武闘会と呼ばれる大会で日本一になることができました。
YouTubeで「プレゼンテーション」と検索してみてください。僕が日本一になったときのプレゼンが3番目くらいに出てきます。あとで、ぜひ見ていただけたらと思います。
◉共感を生むシナリオづくりを阻む3つの壁
共感を生みだすシナリオづくりには、「そもそも興味がない」「自分には関係ない」「いまじゃなくていい」という3つの壁があります。
「そもそも興味がない」という無関心の壁は、接点をつくることで越えられます。
さきほどのプレゼンでは、街灯の下で一生懸命勉強する子どもたちの写真を見ていただきました。目に浮かぶような物語を伝えることで、みなさんとの接点をつくれたと思います。
相手に関心をもってもらうために、写真や動画を使って接点をつくってください。
「自分には関係ない」という他人事の壁には往来という方法で対応します。
僕は、商品の実演販売を完成度の高いプレゼンだと思っています。よく切れる包丁を10個のポイントをあげて説明すれば、相手と1個の接点があるだけで共感が生まれます。
プレゼンではまた、東進ハイスクールという名前を出しました。その瞬間に、遠い国の授業から、「テレビで見たことがある」「自分の子どもが受けている授業と似ているかな」という思いが出てきて、共感値がぐんと上がったと思います。
ポイントをいくつも並べ、相手との接点を往来しながら接点を増やすことで、他人事の壁を越えることができます。
最後の「いまじゃなくていい」という壁に対しては、通販番組でよく使われる「いまだけ○%オフ」「先着○名様のみ」「締め切りまであと○時間」といった魔法の言葉が有効です。それでも、全員の心を動かせるわけではありません。
心のブレーキを解除する応用編として、相手の行動ハードルを下げる方法があります。いきなり「僕の本を買ってください」と言っても誰も買ってくれませんが、プレゼンで「プレゼンテーションという言葉を検索してください」と言ったら、みなさんスマホで検索してくださいました。
そして、「あとでその動画を見てください」とお願いしたのです。私の動画にアクセスする、ワンクリックの行動ハードルを下げる仕掛けです。
次ページ >>> 経営に共感のチカラを活かす―仲間を集めるため、組織をまとめるために