「BCP」って何やねん?始まりは取引先から
株式会社オービシは創業して83年。
パッケージの用途となる板紙やカタログ、包装紙などの元になる印刷用紙を仕入れて、紙器製造会社や印刷会社に卸す事業を営んでいる。
そんな同社がBCPを策定し、2019年にレジリエンス認証を受けた。
始まりは2017年。きっかけは取引先からの電話だった。
「ある得意先から“御社はBCPをやられていますか?”と聞かれたんですよ」と與(あたえ)氏と宮田氏が振り返る。
「『BCP』って何やねん」。
初めて聞く言葉に戸惑いながらも、得意先からの問い合わせに真摯に答えなくてはと調べ始めた。
そうするうちに「これは今後必要になってくる。いい機会だからうちもやってみよう」という社長の声かけでプロジェクトチームが立ち上がった。
「プロジェクトチームと言っても経験のない素人集団」と與氏。
専門家の指導を受けながら、何度も社内会議を設けて試行錯誤したという。
想定したリスクはまず「地震」。大地震にあった際、どのように平常時の業務に戻すのかをシミュレーションした。
「例えば商品を在庫している倉庫が倒壊すると出荷不能になります。その時にどうやってお得意様に代替商品を供給するかを考えておかなければなりません」。
同社が普段取り扱っている商品と色や質感の似た商品を持つメーカーを探して候補に挙げた。
また、7階建ての社屋で働く社員全員の配置をフロア図に記録し、救助の際の導線を練った。
2つめの想定リスクは「大雨」。
日本のいたるところでゲリラ豪雨が発生する昨今、物流センターの冠水は他人事ではない。降水量から冠水の可能性を調べ、代替しにくい商品の在庫を倉庫の1階から2階へ移動した。
そして思いがけず効果を上げたのが「感染症」リスクへの対応だ。
策定時の2019年はまだ新型コロナウィルス以前。そのためBCPに盛り込んだのはインフルエンザ対策だった。
しかし、その数ヶ月後に大阪に緊急事態宣言が出る。同社の対応は早かった。
緊急事態宣言が出る前に社員を班分けして出勤のローテーションを組み、机の上にはいち早く手づくりのパーテーションを設置した。
「このような動きができたのもBCPを策定したからこそだと思っています」とふたりは話す。BCPに準拠したコロナ感染症マニュアルを作成し、朝礼では社長を筆頭に常に状況を共有して感染リスクを避ける行動を促している。
BCPは一度つくってしまえば良いというものではなく、運用の継続性が求められる。
「取引先の入れ替わりや社員の入退職などで状況は常に動いています。データの更新が必要ですね」と大変さを語る。
が、だからこそ、未知の脅威に対してスムーズな動きが可能になるとも感じている。
(取材・文/荒木さと子)
中小企業の
BCP(事業継続計画)・災害対応マニュアル
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リスクの発生による影響を最小限に食い止める、起こってしまった時に安全に迅速に対処するための事前対策として、BCP(事業継続計画)、災害対応マニュアルの策定が推奨されています。
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