ものづくり

伝統ある百年企業が新製品開発でネクストステージへ

2021.01.12

 
丁稚奉公からスタートした初代が独立し、1918年に創業した永井撚糸(よりいと)株式会社。ランドセルを始めとする鞄、靴などに使用される高強力ミシン糸「ビニモ」を主力製品として安定成長を続ける百年企業だ。

天然繊維から化学繊繊へとシフトした戦後、ビニモ開発当初は販売チャネルの獲得に非常に苦労したという。その時に唯一、契約を結んでくれたのが関東の老舗糸問屋。ビニモ納入先はその一社のみとするロイヤリティを、永井撚糸は現在も守り続けている。

 
太めの糸を得意とする同社は「MBT」という撚りがほつれにくいインボンドミシン糸の製造販売に加え、今年同社の手掛ける原着糸シリーズ「N」シリーズを販売する。
縫製糸のみならず、生地やテープ、その他繊維製品の原料としての多様性があるのが特徴となっている。

販売・マーケティングを担当する営業部の中濵課長は「刺繍などの雑貨、アパレル全般のニーズを意識し、主に海外での展開に力を入れていく」とその開発意図を語る。

 
Nシリーズは、素材をつくる段階で顔料を練り込んだ原着糸と呼ばれる糸で、染色時の大量の水が不要となり環境負荷が少なく、サスティナブルな社会づくりをめざすSDGsの流れにも適応。

繊維の断面をいびつな三角形状にすることで、これまでのミシン糸には珍しい光沢を実現した。

「さまざま取引先メーカーの要望に応える裏方的なものづくりで歩んできました。これからの時代を生き抜くためにも、『何か面白いことを始めよう』という弊社のマインドにこだわりたい。その一つがNシリーズ」と語るのは副社長の永井氏。伝統の技術を生かしながら、常にイノベーションに挑戦する、若々しい心意気が同社の強みと見た。

「エコに配慮した製品にユーザーが求める機能性を加えていく。それが私たちのこれからのものづくりの基本。その一環として感性重視のNシリーズの糸に抗菌性などの機能付加も射程に入れています。また、ミシン糸以外の繊維加工業にもNシリーズの原着糸を幅広く販売していきたい」と中濵氏は語る。

 
日本と中国にそれぞれ25名の社員を配し、オンラインを駆使した定例会議で技術部門と営業部門の情報共有を緊密に図りつつ事業展開を進める永井撚糸。

新しい100年へと踏み出したばかりの同社のネクストステージは、優れた技術力とビニモに象徴される顧客との深い信頼関係によるオファー対応をベースにしつつ、時代の風を読むプロダクト提案でグローバルな市場への切り込みにある。

 

取締役副社長 永井 基裕氏(右)、営業部課長 中濵 佳紀氏(左)

(取材・文/山蔭ヒラク)

 

 
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