スタッフ連載

55歳の起業-エンジニアであり、ビジネスビルダーでありたい

2020.06.04

【起業家図鑑】
大阪産業創造館 創業支援チームのプランナーが月替わりで起業家を紹介する連載コラム。起業を志したキッカケや、困難に直面したとき乗り越えた方法、また事業を軌道に乗せるために必要なことなど。一歩先をいく先輩起業家の体験談をプランナー目線で紹介します。
evepage_sogyo_bnr

【起業家図鑑】vol.25 55歳の起業-エンジニアであり、ビジネスビルダーでありたい

中国深圳。巨大なインテリジェントビルが立ち並ぶ電脳街に中村さんの姿があった。

深圳に来るといつもビジネスのスピードとエネルギーに圧倒され、刺激される。かつての日本企業にもあったはずの活気と自由さを肌で感じ、その心躍る時間は懐かしさを感じるという。

中村 健二氏

中村さんの事業は、IoT機器、AI、などICT機器の開発、そのプロジェクトコーディネート、マーケティング支援などを手掛ける技術コンサルタントだ。顧客は電子デバイス、機器メーカーが多く、日本国内、海外と出張で忙しく飛び回る毎日だ。

起業前は企業人として技術畑を歩んできた。大手カメラメーカーで研究職として製品開発に関わり、その後転職。電子デバイスメーカーでは、執行役員として製品開発だけでなくマーケティングにも携わり、中国本土のマーケットも開拓した。

日本、中国、台湾で優秀な仲間たちに支えられ、意気揚々と働いていたが、次第に「もっと自由にもっと速く翼を広げ羽ばきたい」との欲求が芽生えはじめた。

やがてその想いは抑えられなくなり、55歳の時「Techno Libero」を起業した。

【Libero】とはイタリア語で「自由」を意味する。サッカーやバレーボールなどのポジション名にもあるように、~自由に気ままに動き、そして誰よりも一生懸命走る~そんな想いを込めた。

エンジニアとして、またビジネスビルダーとして企業の看板を外し、自分のビジネスに踏み出した。それまでに培った人脈をたどり営業の代行を行うセールスレップをはじめた。

昔の付き合いをたどり、さまざまな人と再会した。勤めてきた企業の看板なしで、自分のアイデアと経験を唯一のバリューとして多くの提案を続けた結果、製品開発のプロジェクトのお膳立てや進行の依頼を受けることも増えた。

起業仲間のエンジニアともつながり、中村さんが受けてきた仕事を依頼できる「人のネットワーク」も広がった。現在はコンサルティングだけでなく自らがガジェット販売のサイトも立ち上げ、製品販売も手掛けている。

第一弾は、ノイズキャンセル機能イヤフォン「Mu-On」だ。前職の中国の部下の親類が開発したガジェットを中国から輸入しAmazonで販売している。

当初はこの製品の販売を通常の流通ルートに乗せようと、さまざまなメーカー・ブランドにあたってみたが苦戦、中村さんはこう考えた。

「まずは自分で売ってみよう!そうすれば輸入も販売経路も勉強になるし、何よりも市場の情報が手に入る」。そしてすぐさま行動に出た。発注後は起業仲間に教えてもらいながら、大阪南港にある税関にも足を運んだ。

「なんでも勉強になるんですよ、まだまだ勉強できることはいっぱいあります」と、笑って話す。企業に勤務していたころよりも、ずっとチャレンジスピリットが持てるようになったそうだ。

中村さんは、自らの起業をエンジニアのセカンドスタートとしてのロールモデルになればと考えている。「定年延長の中、優秀な人材がうまく活用されない日本においてもっと違う形での活躍の仕方があり、またそれを意識し若いうちからの独立心をもった成長の体現が必要だ」と語る。

アメリカ・欧州だけでなく中国・台湾・韓国のエンジニアには、それがあった。日本のエンジニアたちはそれを強く意識すべきだと力説する。

中村さんは起業するときに周囲に話した言葉がある。「楽しくなければ仕事じゃない」。これは中村さんの仕事に対する哲学でもあるという。

(取材・文/大阪産業創造館 創業支援チーム
起業プログラム&デスク「立志庵」マネージャー 明田豊広)

▼ブース、ロッカー、打合せスペースなど24時間365日利用できる!
起業プログラム&デスク「立志庵」
https://www.sansokan.jp/akinai/risshian/

Techno Libero

代表

中村 健二氏

https://technolibero.com/

事業内容/IoT機器、AI、などICT機器の開発、プロジェクトコーディネート、マーケティング支援、自社製品開発販売