《講演録》営業会社から注目スタートアップ企業へ!akippaのビジネス展開&資金調達ストーリー【前編】
▶プロサッカー選手をめざすも徐々に商売の道へ
もともと私はプロのサッカー選手を志望していました。17歳のときの進路の第一希望はセレッソ大阪、第二希望はガンバ大阪という具合でした。
プロをめざしながらフリーターをしていたある日、雨の日に100円均一の傘を2本購入し、雨に濡れて困っている会社員の方に声を掛けたところ、1本300円で売れたのです。その時「商売って面白い」と思いました。
もう少し本格的に商売をやってみたいと考え、通信機器の完全歩合制の営業をしたり、求人広告チラシを発行したりして、毎月30万円は手元に残るくらい稼げるようになりました。それでも当時の私にとっての最優先事項はやはりサッカーだったんです。
ついにJ2クラブに挑戦する機会を得て「もしこれで駄目だったら起業しよう」と覚悟の上で臨みましたが、残念ながらプロ契約には至りませんでした。気持ちを新たにし、起業の勉強のためにJASDAQ上場企業で1年半働いたのち、2009年24歳のときに起業しました。
▶営業会社としてスタート。攻めの姿勢で増員したものの債務超過に
資本金は5万円、ソフトバンク株式会社の携帯電話の営業代行事業としてスタートしました。始めの2週間は1人でやっていましたが、友人を誘い徐々に人を増やしていきました。
しかし、労働集約型のビジネスモデルにやがて限界を感じるようになり、先行投資後に利益を上げる収穫逓増型に変えようと、求人サイトを立ち上げ求人広告事業を開始しました。広告掲載料は無料で、採用に至った場合に広告主から料金をいただくという仕組みです。
ところがこの事業はうまくいかず、従業員30人を抱えながら債務超過4,000万円、会社の銀行残高は1万円という状態が3ヵ月も続くようになっており、どうにか従業員に給料を渡している状態でした。
絶望の中、資金繰りの方法を模索すべく立ち寄った本屋で手にした「資金繰りに困った時に読む本」に書いてあった「ベンチャーキャピタルからの調達」という方法でした。
早速「ベンチャーキャピタル日本」で検索して、ヒットした会社に手当たり次第に電話をかけました。30社掛けてアポが取れた3社のうち2社には断られ、最後にお会いしたのが株式会社ジャフコさんでした。「金谷さんは何かやりそうですね」と見込んでいただき、6,500万円の出資を受けて難を逃れました。
しかし、立て直しに必死で営業数字しか見ておらず、お客さんからのクレームが続き社内に疲弊感が生まれました。取締役の松井建吾からも「何のために仕事をしているんですか」と問われ、経営理念についてじっくり考えるきっかけとなりました。
>>>《講演録》営業会社から注目スタートアップ企業へ!akippaのビジネス展開&資金調達ストーリー【後編】に続く
(文/原きみこ)
金谷 元気氏(akippa株式会社 代表取締役社長CEO)
akippa株式会社代表取締役社長 CEO。2009年に創業し、2014年に駐車場シェアリングサービス「akippa」をリリース。2015年に「ガイアの夜明け」などで紹介され、各種メディアでも掲載実績がある。2016年12月にはトヨタ自動車と提携しファンドを通じて出資を受け、現在までに日本郵政キャピタルやJR東日本グループ、住友商事などから総額約24億円の資金を調達している。日経ビジネス「2017年 次代を創る100人」にMLBのロサンゼルス・エンゼルス大谷翔平選手や、ソフトバンク孫正義社長と共に選出された。駐車場シェアリングサービス「akippa」は、2019年7月には累計登録拠点数が3万を突破、8月には累計会員数が150万人に到達した。