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廃棄物を出さない金属表面処理剤

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 常温下で金型を押し付けて鉄を成形する冷間鍛造(れいかんたんぞう)は、高温下で成形する熱間鍛造(ねっかんたんぞう)と比べ精度の高い加工ができ、また切削のように材料を無駄にしないため、自動車部品などの製造で多く採用されている。 この加工の際には、金型と鉄をすべりやすくするために脱脂、酸洗、化成、中和、潤滑という処理が必要だ。途中の水洗工程を入れれば最低8つのプロセスが必要で、更に化成処理で出てくるスラッジ(滓(かす))は定期的に除去する必要が有る。大量に発生するスラッジは産業廃棄物となるため、メーカーにとっては環境、コスト面からスラッジ発生量を抑えることが課題となっている。

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 貴和化学薬品は取引先のニーズに着目し、「一液潤滑剤」の開発に取り組んだ。スラッジが出る化成処理工程を無くし、潤滑剤を塗布する1工程だけで済ませようという発想だ。だが、その開発も簡単なものではなかった。冷間鍛造は金型を押し付ける際に鉄との間で強烈な摩擦を起こすため、従来の潤滑剤の性能ではすぐにはがれてしまう。競合の潤滑油メーカーも同様の研究を進めているが、油も摩擦の力にはかなわないのが現状だ。

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 「創業来60年にわたって、“さびを防ぐ”“金属と塗料の密着力を高める”“潤滑性を良くする”といった金属表面処理に関するどんな課題でもユーザーの求めに応じ解決してきた。その中で培ってきた無機・有機化合物に対する知識とノウハウは他者にはまねできない」と田中氏。従来の処理では、各工程で鉄表面との間で化学反応を起こすことではがれない結合力が生み出されていたが、一液潤滑剤と鉄とでは化学反応を起こさない。そこで、「いわば分子同士が手を出し合い、金型表面をつかむようなイメージではがれにくくする有機系添加剤」をようやく探し当てた。冷間鍛造にとどまらず多くの表面処理では同様に複数の処理プロセスを経るため、「すべての表面処理において1液処理を可能にし、産業廃棄物をゼロにしたい」と田中氏は目標を掲げる。

 同社では昨年末から、顧客を訪問する営業担当者にIT 機器を持たせている。現場で使われている処理剤濃度やライン状態を測定、現場の状態について“見える化”を図ることでメンテナンスなどに生かす。いずれは、顧客の機械をネットワークで結び、処理剤の状態を現場でモニタリングできるようにするとともに情報のデータベース化を図り、製品改良にも生かす。

 今や国内にとどまらず、アジアにも広がりつつある。“同社の技術と現場力”はI Tによってさらに凄味を増すことになりそうだ。

2013年03月10日
貴和化学薬品株式会社
代表取締役社長  
田中 健治氏
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